法人の役員社宅制度を活用して自宅コストを節税する方法|初心者向け解説

法人の役員社宅制度を活用した節税をイメージしたイラストで、スーツ姿の男性がデスクで働き、背景には家のイラスト、家賃契約書、電卓、円マークのコイン、ガベル(判決槌)、上向き矢印が描かれた構図の画像。
目次

自宅コストが劇的に下がる“役員社宅制度”という選択肢

法人を運営している経営者や不動産オーナーの中には、「もっと自宅コストを下げたい」「家賃や住宅ローンが重い」と悩んでいる方が少なくありません。とくに一定以上の所得がある場合、手取りを増やすための方法として節税は大きなテーマになります。

そこで非常に効果的なのが 法人の役員社宅制度 です。

役員社宅制度とは、法人が役員(自分)に対して社宅を貸し出す制度で、法人が住宅費用を負担しつつ、役員本人は“非常に低い家賃”のみを支払うことで居住できる仕組みです。

一般的な会社員の社宅のイメージとは違い、オーナー社長は自らの法人と契約できるため、節税の自由度が高く、非常に強力な節税メリットを生み出します。

役員社宅をうまく活用すれば、

  • 自宅の家賃負担は約1/3に
  • 法人で家賃を経費化
  • 個人の所得税・住民税は大幅に減少
  • 住宅ローンの負担方法を工夫すればさらに節税

など、複数のメリットを得ることができます。

しかし、制度を誤解したまま導入すると、

  • 家賃が高すぎて給与課税されてしまう
  • 税務調査で否認される
  • 法人で経費にできない
    などのリスクもあります。

そのため、初心者でも理解できるように、役員社宅制度の仕組み・税務上の取り扱い・注意点・節税効果をすべて整理していきます。


自宅を社宅化するときに多くの人がつまずくポイント

役員社宅制度は非常に魅力的な仕組みですが、「実際にどう運用すれば良いのか」については誤解が多く、トラブル・否認事例も多い制度です。

特に初心者がつまずきやすいポイントは次のとおりです。

●どこまで法人経費にできる?

「家賃全額が経費になる」と誤解している人がいますが、実際には“一定の基準家賃”の計算が必要です。

●住宅ローンの家は社宅にできるの?

可能ですが「建物を法人名義で所有する必要はない」ものの、法人との賃貸契約を結ぶルールは必須です。

●法人の経費にすると個人の税金はどうなる?

役員は“所得税が減る”、法人は“経費が増える”ため二重に効果があります。

●家賃設定を間違えるとどうなる?

家賃が高すぎると「給与課税」になり節税どころか逆効果です。

●自宅を購入する場合は?

自宅購入時にも社宅化は可能ですが、建物の所有者・修繕費の負担・減価償却の扱いを理解していないと損をします。

こうした誤解をなくすためにも、“税務上の正しい仕組み”の理解が不可欠です。


役員社宅制度の仕組みと節税が成り立つ理由

役員社宅制度は「法人が役員に対して社宅を貸す」という形をとりますが、重要なのは以下の2点です。

●① 個人は“家賃の一部だけ”を支払えば良い

役員が社宅に住む場合、役員本人が法人に支払うべき家賃(=“使用料相当額”)は、以下の式で計算されます。


【小規模住宅(床面積132㎡以下)の場合】

使用料相当額 = 固定資産税×6%+修繕費×2%+敷地固定資産税×6%

(※毎月に換算して支払う)


つまり、一般市場の家賃が20万円の家でも、上記式に当てはめると 月3万円〜5万円程度 で済むことが珍しくありません。


●② 法人は“家賃全額”を経費にできる

法人は市場家賃20万円を家主に払い、その全額を経費計上できます。

つまり、

  • 法人:20万円を経費(節税)
  • 個人:3〜5万円だけ支払う(手取りUP)

という構造が成り立ちます。

この「双方が節税になる」仕組みこそ、役員社宅制度が強力な理由です。


役員社宅制度が不動産オーナーに特に向いている理由

不動産オーナーは、物件を事業として持っているため通常の会社経営者よりも社宅制度の用途が多く存在します。

●① 法人で不動産所得をまとめられる

役員社宅として扱うことで、法人の固定費として家賃を計上でき、キャッシュフローが安定します。

●② 個人の所得税負担が劇的に減る

家賃という大きな固定費を法人側へ移すことは、個人の税率を下げる効果があります。

●③ 将来的に不動産を法人に移す場合もスムーズ

すでに法人で自宅の賃貸運用をしていると、名義移管の計画が立てやすくなります。

●④ 役員家族への家賃補助にも応用可能

家族が役員であれば、同じ制度を使って節税の幅を広げることができます。

不動産を多数所有しているオーナーほど、社宅制度の恩恵は大きくなります。


社宅として扱うために必要な手続きとルール

役員社宅制度は単に「法人が家賃を払う」だけでは成立しません。
税務上の要件を満たす必要があります。


●法人と役員の間で“賃貸借契約”を結ぶ

これは絶対条件です。
契約がなければ、個人への家賃負担が“給与”とみなされます。


●法人が“適正な家賃”で貸し出す

適正家賃とは、前述の「使用料相当額」に基づく金額です。


●社宅規程を作成する

社内規程として社宅の扱い・負担の割合・対象者などを明記する必要があります。


●役員が法人へ家賃を支払う必要がある

家賃ゼロ円はNGで、使用料相当額以上を支払うことが求められます。


●法人が家賃を立て替えても必ず会計処理する

現金で渡したり、個人カードで支払うと経費否認される可能性が高まります。


以上はすべて税務調査で見られるポイントです。
正しく運用すれば非常に強力ですが、適当な運用をするとすぐに給与課税されるため注意が必要です。

役員社宅制度の節税効果を具体的な数値で比較する

役員社宅制度を理解するには、「数字でどれくらい節税になるのか」を把握することが最も効果的です。ここでは、一般的なケースを用いて節税インパクトを具体的にイメージできるよう解説します。


●ケース1:家賃20万円の賃貸物件を社宅化する場合

【前提】

  • 市場家賃:20万円
  • 固定資産税:年間12万円
  • 敷地固定資産税:年間8万円
  • 修繕費見込み:年間10万円

【使用料相当額の計算】
(固定資産税×6%)+(敷地固定資産税×6%)+(修繕費×2%)
=(12万×6%)+(8万×6%)+(10万×2%)
=7200円+4800円+2000円
月1万4,000円程度

【結果】

  • 個人が支払う家賃:1.4万円
  • 法人が負担する家賃:18.6万円を経費計上
  • 個人の所得は18万円減り課税が一気に軽くなる
  • 法人は家賃を全額経費にできるため法人税が減る

【節税額のイメージ】

  • 個人:18万円×(税率30%と仮定)= 5.4万円の節税
  • 法人:18.6万円×約23%= 4.27万円の節税

合計で月 約1万円弱の実質負担減
年間にすると 約12万円以上の節税効果 となります。


●ケース2:住宅ローンで購入した自宅を社宅化する場合

持ち家の社宅化も可能です。多くの経営者が活用している実践的なパターンです。

【前提】

  • 住宅ローン月返済:20万円
  • 固定資産税:年間15万円
  • 修繕積立:年間12万円

【使用料相当額】
(15万×6%)+(12万×2%)+(土地分固定資産税×6%)
おおよそ 月2万円〜4万円 になるケースが多いです。

【結果】

  • 個人が払う家賃は2〜4万円
  • 残りの返済分は法人が賃料として負担
  • 法人の経費化で節税
  • 個人の給与所得が減り所得税も節税

ローン名義を個人のままにしても問題ありません(賃貸契約さえ結べばOK)。
返済額のうち「法人負担分」は、実質的に個人の現金が増える効果になります。


●ケース3:高級賃貸(家賃30万〜50万円)の場合

高所得者ほど役員社宅制度の節税は劇的です。

【使用料相当額】
固定資産税・敷地税・修繕費を前提にすると、
月3万円〜7万円 程度になるケースがほとんど。

【節税効果】

  • 個人の負担:3万円
  • 法人負担:27〜47万円
  • 個人所得の圧縮 → 高い税率の部分(45〜55%)を削減
  • 法人物件の経費計上 → 法人税減少

高額な家ほど節税効果は大きくなります。


実務で失敗しないための注意点とNG事例

役員社宅制度には強力なメリットがありますが、それゆえに「間違えると税務調査で否認されやすい」制度でもあります。
実際によくあるNG事例を紹介しながら、初心者が避けるべきポイントを整理します。


●NG1:家賃ゼロで利用する(絶対にNG)

使用料相当額以上の家賃を払わないと、役員への“給与として課税”されます。
必ず法人へ家賃を支払いましょう。


●NG2:法人と賃貸契約を結んでいない

契約書がないと、家賃の法人負担が経費として認められません。

【必須項目例】

  • 住所
  • 家賃
  • 契約期間
  • 社宅規程の引用
  • 家賃の支払い方法

税務署は契約書の有無を必ず確認します。


●NG3:市場家賃より高い金額を法人が負担する

不動産会社の査定書で市場価格を証明するのは必須です。


●NG4:持ち家の場合に個人と法人の負担が曖昧

  • 修繕費
  • 火災保険
  • 固定資産税

これらの負担割合が曖昧だと否認されやすいです。


●NG5:社宅規程が存在しない

社宅制度は「社内規程」があって初めて成立します。
ネットのテンプレではなく、法人の実態に合わせて作成する必要があります。


役員社宅制度を導入するための具体的ステップ

初心者でも迷わず導入できるよう、実際の流れをステップごとに整理し、チェックリスト形式でまとめます。


●ステップ1:家の市場家賃を調べる

仲介会社の査定書で「適正家賃」を証明します。


●ステップ2:使用料相当額(役員が払う家賃)の計算

必要書類

  • 固定資産税評価証明書
  • 修繕費の見込み資料(実績可)
  • 土地・建物評価額

●ステップ3:法人と役員の間で賃貸借契約を締結

賃貸契約書は必須です。


●ステップ4:社宅規程を作成

法人の規模・役員構成に合わせて作成します。


●ステップ5:法人が家賃を支払い、役員が使用料相当額を法人に支払う

これにより給与課税を回避できます。


●ステップ6:経理処理を適正に行う

  • 家賃全額を経費計上
  • 役員家賃の入金処理
  • 証憑の保存

●ステップ7:毎年使用料相当額を再計算

固定資産税や修繕費は年度で変動するため、毎年更新します。


役員社宅制度は経営者・不動産オーナーの“最強の自宅節税”

役員社宅制度は
「法人が経費化」+「個人の負担減」
という、法人化の最大メリットを同時に享受できる仕組みです。

特に次のような人には非常に効果的です。

  • 家賃が高い都市部に住んでいる
  • 住宅ローン返済が重く感じている
  • 法人化済み、または法人を作る予定
  • 不動産収入がある
  • 将来の相続を見据えて資産を法人へ集約したい

正しく使えば、年間数十万円以上の節税になる制度で、経営者の間では常識的に使われています。

しかし誤った運用をすると否認されるリスクがあるため、この記事を参考に制度を理解し、税理士と相談しながら適切に導入するのが最も安全です。

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