出張が多い法人ほど“旅費規程の整備”が節税につながる理由
不動産業・不動産投資法人は、物件の視察・現地調査・契約同行・銀行打ち合わせなど、出張が多い業種です。
実は、この出張に関連する支出を「旅費規程(りょひきてい)」に基づいて支給することで、
- 役員報酬を増やさずに手取りを増やせる
- 給与課税されない“非課税”の手当を受け取れる
- 法人の経費として落とせるため節税になる
という大きなメリットがあります。
しかし、多くの法人は旅費規程を整備しておらず、
- 出張費を領収書だけで処理している
- 日当(にっとう)を支給していない
- 飲食代と交通費が混ざって処理されている
- 旅費規程が古すぎて税務調査で否認される可能性がある
という状態になっています。
旅費規程を整備するだけで、
毎月3〜10万円以上の可処分所得が増える法人も少なくありません。
この記事では、不動産業の初心者でもわかるように、
旅費規程を整備するポイント、非課税で受け取る仕組み、税務調査で否認されないコツなどを徹底解説します。
出張費を給与扱いにされるリスクと知られていない落とし穴
旅費規程がない、または曖昧な状態で出張費を支給すると、
税務署は次のように判断することがあります。
●「給与」扱いになる
本来は必要経費であり非課税扱いの出張手当でも、
根拠が不十分だと給与として扱われ、次のような負担が増えます。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料(厚生年金・健康保険)
この3つが上乗せされるので、法人も個人も損をします。
●旅費の内容が過剰と判断される
領収書が不十分、金額が高すぎる、
あるいは目的と合わない場合は「私的支出」とみなされ否認されます。
NG例:
- 家族旅行を「出張」として計上
- 過剰なホテルや贅沢な飲食
- 視察に必要ない観光費用
- 同月に複数回、似たような出張明細が続く
- 日当が相場とズレすぎている
●交通費・宿泊費・日当が区別されていない
旅費規程がないと、次の項目が不明確になります。
- 交通費の上限
- 宿泊費の上限
- 日当の支給基準
- 支給方法(実費・定額)
税務調査では「これらが明確であるか」が非常に重視されます。
旅費規程を作らずに運用している法人は、
見えないリスクを抱えたまま運営していることになります。
出張費が非課税で受け取れる仕組み
旅費規程を整備すると、出張費が非課税で受け取れるようになります。
仕組みはシンプルで、以下の3つの条件を満たせばOKです。
●① 実態のある「出張」であること
出張とは、会社の業務のために通常の勤務場所を離れて移動することを指します。
不動産業での出張例:
- 物件の視察
- 土地調査(測量会社同行など)
- 売主・買主との現地立会い
- 契約のための移動(他県など)
- 金融機関との融資面談
- 不動産展示会の参加
- 管理物件の巡回(遠方の場合)
これらはすべて旅費規程でカバーできる範囲です。
●② 旅費規程に沿って出張費を支給していること
旅費規程は会社が自由に作成できますが、
以下の項目を明確に記載しておく必要があります。
【旅費規程に必須の記載内容】
- 出張の定義
- 出張命令の方法
- 交通費の取り扱い
- 宿泊費の上限(国内・海外)
- 日当の金額(国内・海外、役職別)
- 実費支給のルール
- 出張報告書の提出方法
- 例外規定
これが明確に記載されていれば、
旅費は“会社ルールに基づく必要経費”として認められます。
●③ 支給された出張費が「給与に該当しない」と判断されること
税務署が旅費の非課税性を判断するポイントは次の通りです。
- 業務上の必要な支出である
- 私的な用途が含まれていない
- 旅費規程に従った金額である
- 領収書・出張報告書が揃っている
- 過剰・高額すぎない
これらを満たせば、旅費は給与とはみなされません。
旅費規程を整備するメリット
旅費規程を整備すると、法人と役員・社員の双方にメリットが生まれます。
●法人側のメリット
- 経費が増え、法人税の節税になる
- ルールが明確で税務調査に強い
- 出張費の精算がラクになる
- 社員の出張に対するモチベーション向上
- 福利厚生として評価される
●役員・社員側のメリット
- 非課税で日当を受け取れる
- 交通費・宿泊費も全額会社負担
- 手取りが増える
- 自腹の立替が減る
- 曖昧なルールがなくなり安心
●節税メリットの例
例えば、
- 社員
- 日当:3,000円
- 月4回出張
→ 月12,000円が非課税 → 年14.4万円の“非課税収入”
役員であれば、
- 日当:5,000〜10,000円
- 月5回出張
→ 年30〜60万円の非課税収入になるケースも多いです。
不動産業の場合、出張頻度が高いので効果はさらに大きくなります。
旅費規程で設定すべき3つの基本項目
旅費規程で特に重要な項目は、以下の3つです。
交通費の扱いをどうするか
交通費は実費精算が基本です。
不動産業でよくある交通費:
- 電車・バス
- 新幹線
- 飛行機
- タクシー
- レンタカー
- ガソリン代(自家用車利用)
ここで重要なのは、
- 「どの交通手段を優先するか」
- 「自家用車使用時のキロ単価をどう設定するか」
- 「深夜タクシーの扱い」
などを明確にしておくことです。
宿泊費の上限設定
宿泊費は定額制が望ましいです。
例(参考):
- 東京・大阪など主要都市:15,000円
- 地方:12,000円
- 海外:地域により柔軟に設定
明確な上限があれば、税務署も問題視しません。
日当(にっとう)の設定が最大の節税ポイント
旅費規程の中で最も節税効果が高いのが「日当」です。
●日当とは?
出張にかかった諸経費の“雑費”をカバーするための非課税手当。
法律では金額の上限はありませんが、一般的な相場感があります。
例(相場):
- 社員:2,000〜4,000円
- 管理職:3,000〜6,000円
- 役員:5,000〜10,000円
※役員だけ極端に高くすると否認のリスク
●日当は領収書が不要
交通費や宿泊費は実費精算ですが、
日当は「領収書不要・非課税」で受け取れるのが最大のメリットです。
つまり、
- 旅費規程を整備
- 日当を設定
- 出張実施
- 報告書提出
この流れで、自然と手取りが増える仕組みになります。
不動産業で使える旅費規程の実例(シンプルなひな型)
旅費規程は自由に作れますが、最低限の項目を押さえる必要があります。
不動産業で実際によく使われるシンプルな実例を紹介します。
●【旅費規程(サンプル)】
※複雑な文章にせず、税務調査で説明しやすい構成にしています。
第1条(目的)
本規程は、従業員及び役員が業務遂行のため出張する場合の旅費の支給基準を定める。
第2条(出張の定義)
出張とは、業務遂行上必要な用務のため、通常の勤務場所を離れて移動することをいう。
第3条(旅費の区分)
旅費は、交通費・宿泊費・日当・その他必要経費に区分する。
第4条(交通費)
交通費は実費支給とし、公共交通機関を利用する。
自家用車利用の場合は、1kmあたり○円を支給する。
第5条(宿泊費)
宿泊費の支給上限は次の通りとする。
・主要都市:1泊15,000円
・地方都市:1泊12,000円
※上限を超える場合は事前承認を必要とする。
第6条(日当)
日当は次の金額を支給する。
・役員:○○円
・従業員:○○円
※半日出張の場合は半額とする。
第7条(出張報告)
出張終了後、速やかに出張報告書を提出するものとする。
報告書には、日時・訪問先・目的・成果を明記する。
第8条(例外規定)
本規程に定めのない事項については、会社が別途判断する。
このようにシンプルでも、必要項目が揃っていれば十分機能します。
むしろ余計な項目を増やすと、運用が面倒になり逆効果です。
日当が使える“不動産業ならではの具体例”
不動産業は出張の種類が多いため、日当を使えるケースが豊富です。
以下に実務で頻繁に使われる出張例を紹介します。
●物件の仕入れ・視察
- 新規物件の調査
- 現地の環境確認
- 売主との打ち合わせ
▶ 業務目的が明確 → 日当支給OK
●遠方の売主・買主との現地立会い
- 契約前の立会い
- 鍵の引渡し
- リフォーム予定箇所の打ち合わせ
▶ 宿泊を伴うケース → 宿泊費+日当どちらも適用できる
●管理物件の巡回(県外・遠方の場合)
- 清掃状況の確認
- オーナーとの面談
- トラブル対応・工事同行
▶ 管理会社によくある出張例
●銀行や金融機関の来店が多い場合
- 融資面談
- 担当者とのミーティング
▶ 他県の銀行利用も増えているため、日当を活用しやすい
●建築会社・工務店との打ち合わせ
- 注文住宅関連
- 新築アパート・戸建て建築
- 工事契約や施工確認
▶ 工事関連業務は出張扱いとなりやすい
●不動産セミナー・展示会参加
- 不動産テック
- 投資物件説明会
- 展示会(東京ビッグサイトなど)
▶ セミナー参加も“業務目的”に該当し、旅費規程が使える
このように、不動産業は日当の利用範囲が広いのが特徴です。
税務調査で否認されやすい旅費規程NG事例
●NG①:旅費規程があるのに運用していない
書類を作っているだけで、実際には誰も読んでいないケースです。
解決策
- 交通費・日当を「規程に沿って支給している証拠」を残す
- 毎月、経理担当が規程どおりになっているか確認
●NG②:日当の金額が不自然に高すぎる
例:役員の日当を1万円以上にしている法人
法律上上限はありませんが、
税務署は「相場から大きく外れる金額」を疑います。
改善策
- 役員:5,000〜7,000円
- 従業員:3,000〜5,000円
この範囲が安全です。
●NG③:家族旅行を“視察”として計上
不動産オーナーにありがちなケース。
- 家族と遊園地へ
- 観光地めぐり
- 海外旅行を全額経費
- 宿泊が高級ホテル
これらは私的支出と判断され否認リスクが高いです。
改善策
- 業務目的だけを旅費に充当
- 観光部分は自腹にする
●NG④:出張報告書が存在しない
日当や旅費の支給は、出張報告書が必須です。
これがないと「本当に出張したのか」が証明できません。
改善策
- 日付
- 行き先
- 目的
- 成果
最低でもこの4点を書く。
●NG⑤:出張と私用が混ざっている
例:出張として2泊3日 → 実態は1日の業務+2日の私的滞在
これは税務署が最も嫌うパターンです。
改善策
- 私的日程があれば按分
- 宿泊費・日当も按分
- 出張部分だけ経費にする
日当を使った“不動産業の節税プラン”
実務で効果の高い日当の使い方を紹介します。
●プラン①:役員の出張日を固定化する
例:
- 毎週火・木は物件巡回の日
- 月1〜2回は管理物件の訪問
- 月1回は銀行訪問
出張が定期化されれば、その分日当も安定して支給できます。
●プラン②:利回り調査・競合調査も出張扱いにする
不動産業では以下も立派な業務です。
- 周辺家賃調査
- 同業他社の物件視察
- 新築物件の設備チェック
目的が業務であれば出張に該当します。
●プラン③:毎月の出張回数×日当=“非課税給与”の固定化
例:
- 役員:日当6,000円
- 月6回出張
→ 月36,000円
→ 年43万2,000円の“非課税収入”
これでも税務署から問題視されません。
実務で旅費規程を活用するための行動ステップ
ここからは、あなたの法人で今日からできる行動ステップです。
●ステップ1:旅費規程を作成する
- ひな型を参考にする
- シンプルでOK
- 税理士と相談してもよい
●ステップ2:日当の金額を決定する
安全な金額の目安:
- 役員:5,000〜7,000円
- 従業員:3,000〜5,000円
●ステップ3:交通費・宿泊費の上限を設定する
- 宿泊費は地域別で設定
- 自家用車使用時のキロ単価も決める
●ステップ4:出張報告書を必ず作成
- アプリ化すると便利(Googleフォームなど)
- 写真を添付しておくとさらに安全
●ステップ5:経理が運用ルールを定期チェック
- 日当が過剰になっていないか
- 宿泊費の上限を守っているか
- 規程通りに運用されているか
●ステップ6:税務調査で説明できる資料を残しておく
- 出張報告書
- 旅費規程
- 経費精算書
- 旅費規程に基づく証跡
これだけ揃えておけば税務署は否認できません。

