表面利回りの数字だけを見て「買ってしまう」落とし穴
不動産投資を始めようとすると、最初に気になるのが「利回り」です。
ポータルサイトを見ると、物件ごとに「表面利回り○%」と大きく表示されており、この数字が高いほど儲かりそうな印象を受けます。
しかし、実際に投資を始めた人の多くはこう語ります。
- 「表面利回りは良かったのに手残りがほとんどない」
- 「毎月の返済と諸費用で赤字になった」
- 「まさかこんなに維持費がかかるとは思わなかった」
これは、利回りという“見せかけの数字”だけで判断した結果の典型例です。
不動産投資の収益は、家賃収入からランニングコストとローン返済を差し引いた「手残り = キャッシュフロー」で決まります。
利回りが高くても、ランニングコストが高い物件は、実際の手残りが非常に小さく、場合によっては赤字になることもあります。
初心者が最も陥りやすいのが、ここです。
“利回りだけでは絶対に判断できない”理由
利回りだけでは判断してはいけない最大の理由は、利回りが以下の情報を一切反映していないためです。
- 空室の可能性
- 管理費・修繕積立金
- 大規模修繕費
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険・地震保険
- 管理委託費
- 退去時の原状回復費
- 家賃下落リスク
- 金利変動リスク
- 物件の入居需要
- 実際の募集家賃との差
表面利回りは「年間家賃 ÷ 物件価格」で計算される非常に単純な数字であり、不動産投資に必要な要素の95%を含んでいません。
にも関わらず、見栄えが良い数字だけを強調し、投資家の判断を誤らせてしまう状況が起きています。
本当に見るべきは「実質利回り」と「手残り」
結論として、不動産投資で見るべき指標は次の2つに尽きます。
■ ① 実質利回り(ネット利回り)
家賃収入からランニングコストを差し引いた“実態に近い利回り”。
■ ② 毎月のキャッシュフロー(手残り)
(家賃収入 × 稼働率)− ランニングコスト − ローン返済
これこそが不動産投資の現実の収益。
利回りが10%ある物件でも、ランニングコストが高くなると実質利回りは4〜5%になることも珍しくありません。
ランニングコストが投資の成否を左右する仕組み
利回りに影響するランニングコストは多岐にわたります。
ここを軽視してしまうと、どれだけ利回りの良い物件を買っても黒字にはなりません。
初心者ほど「ランニングコストを忘れてしまう」ため、赤字物件をつかみやすくなります。
ランニングコストの種類と影響度が高い項目
■ 管理費・修繕積立金(区分マンションの場合)
管理費:6,000~12,000円
修繕積立金:8,000~15,000円
→ 合計で家賃の15〜25%程度になることもある
築年数が古いマンションでは、修繕積立金が「値上げ」される可能性も高く注意が必要。
■ 管理委託費(管理会社)
一般的には 家賃の5%前後。
しかし、自主管理が難しい人は必須の費用。
例:家賃70,000円 → 月3,500円
■ 修繕費(自己負担)
- 給湯器交換:10〜20万円
- エアコン交換:6〜15万円
- 水回り修理:1〜5万円
年間家賃の5〜10%を修繕リスクとして見込むべき。
■ 固定資産税・都市計画税
物件により大きく異なるが、
年間5万〜15万円が目安(区分ワンルームの場合はやや安いことも)。
■ 火災保険・地震保険
火災保険:年間1〜2万円
地震保険:年間数千〜数万円(地域により差がある)
賃貸物件は火災保険の加入が必須。
■ 空室損(稼働率)
稼働率90%を前提にしていると、現実は80%になることもある。
特に入れ替えのタイミングは数ヶ月空室になる可能性も高い。
■ 家賃下落
築年数が進むと家賃は下がる。
新築 → 築20年で家賃が2〜3割下落するケースも普通。
ランニングコストを反映させない利回りは「参考値」にすぎない
ランニングコストは毎月の支出として確実に発生するため、利回りが良くても手残りが減る最大の要因です。
つまり…
■ 表面利回りは「買わせるための見せかけの数字」にすぎない
物件価格と満室家賃だけを使うため、実際の収益とはかけ離れています。
利回りが高い物件でも、以下の場合は赤字になる可能性が高いです。
- 管理費・修繕積立金が高いマンション
- 空室が多い場所の物件
- 古い木造アパート
- 修繕費が多くかかる築古物件
- エリア需要が低い物件
数字を入れて理解する「利回りとランニングコスト」のギャップ
利回りの落とし穴をより深く理解するために、ここでは具体的な数値を使った比較例を紹介します。
表面利回りでは黒字に見えるのに、手残りは赤字になる例
■ 条件
- 物件価格:1,500万円
- 月額家賃:70,000円
- 表面利回り:70,000 × 12 ÷ 1,500万円 = 5.6%
ぱっと見では悪くない利回りです。
しかし、ランニングコストを加えると評価は一変します。
■ ランニングコスト(例)
| 項目 | 金額(月) |
|---|---|
| 管理費・修繕積立金 | 13,000円 |
| 管理委託費(5%) | 3,500円 |
| 修繕積立(自己積立) | 3,500円 |
| 固定資産税等(按分) | 5,000円 |
| 火災保険(按分) | 1,000円 |
→ 合計:25,000円
■ 実質家賃収入(稼働率95%)
70,000円 × 0.95 = 66,500円
■ 実質手残り
66,500円 − 25,000円 = 41,500円
これが実質的な収入です。
■ 実質利回りの再計算
41,500 × 12 ÷ 1,500万円
= 3.32%
つまり…
★ 表面利回り5.6% → 実質利回り3.3%
利回りが半分以下に減っていることが分かります。
これにローン返済が加わると、キャッシュフローは赤字になる可能性が高いのです。
ランニングコストが高くなりやすい物件の共通点
次のような物件は、初心者が見落とす「コスト高リスク」が潜んでいます。
■ 古い区分マンション(築25年以上)
- 修繕積立金が高額化しやすい
- 設備交換費が頻繁に発生
- 入居付けも弱く空室が増加しやすい
→ 実質利回りが一気に下がる
■ 駅から遠い物件(徒歩15分以上)
- 家賃下落スピードが早い
- 空室期間が長くなる
- 広告費が増え、シミュレーション以上に費用がかかる
■ 木造築古アパート
- 雨漏り・給湯器・配管など修繕リスクが高い
- 空室リスクが高く稼働率が安定しにくい
- 保険料も高くなりがち
■ 修繕積立金が安すぎるマンション
管理組合が将来の修繕費を賄えないため、
突発的に「一時金」数十万円〜数百万円の追加請求が来る可能性がある。
ランニングコストを正確に把握したうえでの“買っていい物件”の基準
初心者が安全に投資を始めるなら、次の基準を満たす物件が望ましいです。
■ コストバランスが良い物件の特徴
- 管理費+修繕積立金が「家賃の20%以内」
- 稼働率95%以上が期待できるエリア
- 修繕積立金の滞納が少ないマンション
- ローン返済後も十分キャッシュフローが残る
- 同一エリアの相場と比べて家賃が適正
- 築浅または中程度(築5〜20年)のRC物件
- 主要駅から徒歩10分以内の物件
初心者が絶対にやるべき「利回りチェックの手順」
利回りだけを見て失敗しないために、以下のステップを踏むことをおすすめします。
■ ステップ1:表面利回りは“参考程度”に見る
投資判断に使うのは「実質利回り」と「手残り」。
■ ステップ2:家賃・相場の妥当性チェック
- SUUMO
- HOME’S
- at home
などで周辺相場と比較。
■ ステップ3:ランニングコストを書き出す
最低限チェックすべき項目:
- 管理費
- 修繕積立金
- 管理委託費
- 固定資産税
- 原状回復費(退去時)
- 火災・地震保険
- 修繕リスク
- 広告費(必要な場合)
■ ステップ4:稼働率を見積もる
現実的には以下のレンジが多い:
| 物件タイプ | 稼働率目安 |
|---|---|
| 都市部ワンルーム | 95〜98% |
| 郊外ファミリー | 90〜95% |
| 築古アパート | 80〜90% |
■ ステップ5:キャッシュフローを計算する
(家賃 × 稼働率) − コスト − 返済額
これが黒字かどうかが最重要判断。
■ ステップ6:最悪シナリオもシミュレーション
- 空室3ヶ月
- 家賃5%下落
- 修繕費10〜20万円発生
→ ここで破綻しないかが重要。
このチェックを満たすと“利回りの罠”に引っかからない
利回りだけに頼らず、コストをすべてシミュレーションに入れることで初めて「本当の収益」が見えるようになります。
初心者がやってはいけない判断:
- 利回り10%だからお得
- 価格が安いから買うべき
- 築古だが高利回りだから逆に儲かる
いずれも危険です。
不動産投資は「利回りよりも手残り」を見ることで初めて成功に近づけます。
▼ 初心者が今日からできる具体的な行動
■ 行動1:気になる物件を3つ選び、実質利回りを計算してみる
実際に計算してみると、
同じ表面利回りでも手残りがまったく違うことが分かる。
■ 行動2:今後3年間に発生しそうな修繕項目を予測する
- 給湯器の年数チェック
- エアコンの年数
- 屋根や配管状況(木造)
などは必ず確認。
■ 行動3:管理費+修繕積立金の推移を管理会社に質問する
マンションの場合は重要。
「今後値上げ予定」かどうかは必ず確認。
■ 行動4:稼働率の根拠を不動産会社に説明させる
“満室想定”の資料は信用してはいけない。
必ず周辺相場と比較する。
■ 行動5:キャッシュフローが黒字の物件だけを候補に残す
不動産投資は「黒字 → 安定 → 拡大」、この順番が王道。

