不動産会社の利益に直結する「交際費」の正しい使い方
不動産会社は、他業種に比べて「人間関係」や「紹介」が重要な業界です。
物件の仕入れ、売買の仲介、賃貸管理の契約、オーナー対応など、
多くの場面で相手との信頼関係が売上に直結します。
そのため、
交際費・接待費が事業活動の重要な投資になるケースが非常に多い
という特徴があります。
しかし一方で、交際費は税務調査で必ずチェックされる項目です。
- 経費にできるかどうかの判断が難しい
- 私的支出と混同しやすい
- 領収書の内容が不十分で否認されやすい
こうした理由から、正しいルールを理解していないと、
本来経費にできるはずの支出が認められなかったり、逆に税務否認されるリスクがあります。
この記事では、不動産業が押さえるべき交際費のルールと節税のコツを、初心者にもわかりやすく解説します。
不動産業でありがちな交際費の誤解とリスク
交際費の税務ルールは複雑で、特に不動産業では誤解によるリスクが増えがちです。
まずは、よくある誤解を整理しておきましょう。
●誤解①:接待で使った食事代はすべて交際費として経費にできる
→ 事実:条件を満たさないと経費にならない。
特に「誰と」「何の目的で」使ったのかが明確である必要がある。
●誤解②:ランチや夕食なら私的とみなされない
→ 事実:同席者・目的が仕事と関連していなければ否認。
●誤解③:社員同士の飲み会も交際費でOK
→ 事実:社員同士は“会議費”や“福利厚生費”に該当し得る。
●誤解④:5,000円以下なら全部経費にできる
→ 事実:法人規模により「5,000円ルール」は使えないことがある。
●誤解⑤:個人事業主も交際費の損金上限の特例が使える
→ 事実:交際費の上限特例は“法人のみ”。個人は制度が異なる。
特に不動産業では、
「同行したスタッフの飲食代」「オーナー対応の手土産」「仲介会社との会食」
など曖昧になりやすい支出が多く、税務リスクが高まります。
法人が交際費を経費にできるための基本条件
交際費が税務上の経費として認められるためには、以下の3つをクリアする必要があります。
●① 事業との関連性があること(ビジネス目的が明確)
交際費は、
取引先や顧客との関係を維持・改善・円滑にするための支出
であることが必須条件です。
不動産業では以下が該当します。
- 土地オーナーへの挨拶の食事
- 仲介会社との情報交換の接待
- 売主・買主との契約前後の打ち合わせを兼ねた会食
- 一括借上げ(サブリース)オーナーとの関係維持
- 管理会社との懇親会
- 不動産業者間の交流会での飲食費
「仕事に関係しているか」を説明できるかどうかが重要です。
●② 支出内容が合理的で、金額が妥当であること
不動産業は大口契約が多いため、
相手が大企業・富裕層である場合は高額な接待も存在します。
しかし税務署は
「価格・場所・内容」が業界相場から大幅に外れていれば否認の可能性
が高まります。
例:
- 銀座クラブで1人10万円の接待 → 明確な合理性の説明が必須
- 観光旅行を“接待”として処理 → 原則NG
- 家族・プライベートの飲食 → 説明不能で否認
節税のためには、
内容・金額の説明ができる範囲で行うことが重要です。
●③ 支出の記録(エビデンス)が十分であること
交際費は、領収書だけでは不十分です。
必ず次の情報をセットで記録する必要があります。
- 日付
- 場所
- 金額
- 同席者(法人名・氏名)
- 目的(商談・情報交換・契約締結・関係維持など)
- 担当者名
これらが不足していると、税務調査で否認される確率が高くなります。
不動産業が知っておくべき交際費の税務ルール(最新)
不動産業の法人が理解しておくべき交際費ルールには、主に次の5つがあります。
●① 800万円までの交際費は全額損金算入できる(中小法人)
資本金1億円以下の法人は、
年間800万円までの交際費(接待飲食費)が全額経費となる特例があります。
例:
- 交際費600万円 → 600万円全額経費
- 交際費1,000万円 → 上限の800万円だけ経費
不動産業は交際費が多くなりやすいので、非常に有利な制度です。
●② 接待飲食費は50%損金(中小企業でも選択可能)
800万円枠を使わずに、
“飲食”に関係する交際費の50%だけ経費にする方法もあります。
この2つは“選択制”です。
| 制度 | 有利になるケース |
|---|---|
| 800万円まで全額経費 | 年間の交際費が多い(400〜800万円) |
| 50%損金ルール | スタッフの飲食が多い・少額が多い |
不動産業は年間の接待が多く「800万円枠」が有利なケースが一般的です。
●③ 1人当たり5,000円以下の会食は「交際費から除外」できる
次の条件を満たす会食費は、交際費でなく「会議費」として計上できます。
- 取引先など外部の人が参加している
- 1人あたり5,000円以下
- 飲食店での飲食代である
- 社員同士だけの飲食ではない
このルールを正しく使えば、
交際費限度額を使わずに飲食代を経費処理できる
ため、節税効果が大きくなります。
●④ 社員同士の飲食は「福利厚生費」が使える
例えば、
- 社員懇親会
- 新年会・忘年会
- 打ち上げ
- 社員旅行
など、社員同士の飲食は交際費ではなく福利厚生費で経費にできます。
ただし、
- 社員全体を対象にしている
- 特定の人だけの飲食になっていない
- 極端に高額でない
などの条件があります。
●⑤ 接待に伴うタクシー代・手土産代も経費になる
不動産業は訪問が多いため、飲食以外の交際費にも注意しましょう。
経費になる例:
- 接待後のタクシー代(相手先分・自社分)
- 契約時の手土産・贈答品
- お中元・お歳暮
- 開業祝い・移転祝い
- ゴルフ代(ビジネス目的で同行した場合)
- 香典・見舞金(事業関係者の場合)
ただし、ゴルフや高額贈答品は私的利用が疑われやすいため、
目的の説明と記録が必須です。
不動産業で否認されやすい交際費のNG事例
不動産業は交際費の利用が多いため、税務調査でも頻繁に確認される分野です。
ここでは、実務で特に“アウトになりやすい”事例を整理します。
●NG①:家族との外食を「取引先との会食」として計上
代表者の家族が同席した食事代は、原則として私的支出です。
たとえ店舗で商談したとしても「家族の分」は否認されます。
改善策
- 家族同席の会食は避ける
- 同席してしまった場合、家族分の飲食費は経費に含めない
- 必要なら領収書に人数を明記し、家族分を按分する
●NG②:明らかに私的目的のゴルフや高額接待
不動産業ではゴルフ接待がよくありますが、
- 相手が取引先でない
- 明確な商談目的がない
- 毎週のように同メンバーで行っている
- 高級リゾートゴルフの旅費もまとめて計上している
こういったものは否認のリスクが極めて高いです。
改善策
- 誰と何の目的で参加したかを記録しておく
- ゴルフ場の領収書とは別に「接待メモ」を残す
- プライベート分は按分して除外する
●NG③:社内の飲み会を全部「交際費」で計上
社員同士の食事・懇親会は「福利厚生費」で処理すべきであり、
交際費に入れると損金利用枠を無駄に消費してしまいます。
改善策
- 社員懇親会は福利厚生費
- 会議費に該当するケースもある(軽食・飲み物など)
●NG④:領収書の裏にメモがない(エビデンス不足)
交際費で最も多い否認理由は「目的」「相手先」が分からないケースです。
- 「飲食代10万円」だけでは経費にならない
- 税務署は“その飲食が売上にどう関係するのか”を見る
改善策
領収書には必ず次を書き添える:
- 誰と(会社名・名前)
- 何の目的で
- 何を話したのか(簡潔でOK)
- 契約や商談の進捗との関係
●NG⑤:一人での食事代を「会食」として計上
代表者が1人で食事をした費用は、原則経費になりません。
ただし、遠方への出張中の食事は、旅費交通費や日当の扱いになります。
改善策
- 出張時 → 日当制度を活用
- 移動中の軽食 → 会議費として処理する場合もあり得る(要注意)
税務調査で否認されないための実務的ポイント
交際費を安全に使いながら節税するには、「証拠力」を高める工夫が重要です。
●① 領収書の記載内容を整える
理想的な領収書の付属メモは次の通りです。
- 日付
- 店舗名
- 同席者(会社・役職・個人名)
- 金額
- 利用人数
- 目的(例:仕入れ候補物件の情報交換)
特に不動産業では「誰と会ったか」が重要です。
●② 5,000円以下の会食は積極的に「会議費」で処理
1人5,000円以下の会食は交際費から除外できます。
不動産業は取引先と少額の食事が多いため、このルールを活用すると節税効果が大きくなります。
注意点
- 社員同士の飲食は対象外
- 飲食費のみ(タクシー代などは含まない)
- 参加者の人数を明確にすること
●③ 社員の懇親会・飲食はできる限り福利厚生費へ
福利厚生費は交際費の枠に含まれず、税務上も認められやすい科目です。
福利厚生費の条件:
- 社員全員または一定基準の社員が対象
- 慰安目的(忘年会など)
- 過度に高額でないこと
- 特定の社員だけ優遇しないこと
不動産業は営業チーム・管理チームなど部署ごとに懇親会を開くことが多いため、
福利厚生費に振り分けられる支出が多くあります。
●④ 自社の「交際費ルール」を決めると税務調査で強くなる
税務署は「社内ルールがある法人」を好意的に評価します。
おすすめの社内ルールは次の通り。
- 1回の会食が○万円以上の場合は申請書を出す
- 領収書の裏に必要事項を記載すること
- 家族同席は禁止
- 5,000円以下の場合は会議費で処理
- ゴルフ・旅行は事前承認制
これがあると、税務調査で
「しっかり管理されている会社」と判断され、否認されにくくなります。
不動産法人が交際費を増やすとむしろ節税になるケース
“交際費が多い=税務上不利” と考える方が多いですが、
実は不動産業の場合、うまく使えば節税に繋がります。
●ケース①:仕入れのチャンスが多い法人
土地オーナーや仲介業者との会食が増えるほど、
物件情報が入ってくる確率が上がります。
- 良い物件を仕入れる
- 仲介手数料が増える
- 管理契約に繋がる
これは交際費が「売上を作る投資」になる典型例です。
●ケース②:800万円枠をフル活用できる
年間交際費が600〜800万円の法人は、
800万円の全額損金枠を使い切ることで節税効果が大きいです。
例:
利益が1,000万円 → 交際費を上手に活用 → 800万円以下で全額損金 → 法人税負担が軽減
●ケース③:会議費と福利厚生費を組み合わせる
交際費を“節税できる科目”に振り分けることで、
- 会議費
- 福利厚生費
- 旅費交通費
- 宣伝広告費
などに振り分ければ、
“交際費限度額の中に含めない支出”を増やすことができます。
不動産業は振り分けの余地が大きい業界です。
不動産業の交際費・接待費の活用モデルケース
具体的なモデルケースで、交際費の効果をイメージしやすくしましょう。
●【モデルケース①:仕入れメインの不動産業(法人規模中)】
- 仲介会社との飲食が月5回
- 土地オーナーへの挨拶が月2回
- 契約前後の打合せ会食が月1回
▶ 年間約360万円の交際費
→ 800万円枠に余裕あり → 全額損金 → 節税メリット大
→ 仕入れ効率も改善
●【モデルケース②:管理会社(オーナー対応が多い)】
- 大家さんとのコミュニケーションが売上に直結
- クレーム対応後のフォローミーティング
- 退去時の立会い後の会食
▶ 年間250〜400万円が交際費
→ 全額損金でOK
→ 営業効果も高い
●【モデルケース③:小規模不動産法人(役員1人・社員2人)】
- 仲介会社との情報交換月3回
- オーナー訪問で茶菓子・手土産
- 年1回の社員旅行(福利厚生費)
▶ 交際費150〜250万円
→ 必要最低限で十分節税効果
→ 福利厚生費と組み合わせて安全に効果を発揮
交際費を正しく使うための行動ステップ
不動産業の交際費を節税しながら安全に使うためのステップです。
●ステップ1:交際費の種類を分類(飲食・贈答・交通など)
まず現状の支出を分類すると、
- 交際費
- 会議費
- 福利厚生費
- 旅費交通費
- 広告宣伝費
に振り分けられる支出が見えてきます。
●ステップ2:5,000円以下の会食を積極活用
1人5,000円以下の飲食代が多いと、
交際費枠を消費せずに節税が可能です。
●ステップ3:領収書に「同席者と目的」を必ず記入
税務署が一番重視するのは「目的」です。
- 誰と
- 何を話し
- どの案件に関連したか
最低限これだけは残しておきましょう。
●ステップ4:社内ルールを作る
- 飲食代の上限
- ゴルフ・贈答品の承認
- 家族参加禁止
- 領収書の裏に記録記載の徹底
ルール化すると税務調査で強くなります。
●ステップ5:利益予測とセットで交際費を計画する
利益予測→交際費枠→節税効果
を年間計画に落とすと、最も効率的に節税できます。

