地方と都市、どちらで不動産投資を始めるべき?メリット・デメリット徹底比較

地方の住宅街と都市の高層ビルを対比させ、不動産投資を始める場所に悩む人物を描いたアイキャッチ画像。「地方と都市、どちらで不動産投資を始めるべき?」というタイトル入り。
目次

投資エリアの選択が成否を分ける

不動産投資を始める際、最初に直面する大きな課題が「どのエリアで投資するか」という問題です。都市部の人気エリアを選ぶべきなのか、それとも地方の高利回り物件を狙うべきなのか——。

どちらにも一長一短があり、投資目的や資金力によって最適な選択肢は異なります。個人事業主や中小企業の経営者にとっては、本業の資金繰りや節税対策とも関係してくるため、投資エリアの選択は非常に重要です。


都市か地方か、よくある迷い

投資家の間でよく交わされるのが、次のような議論です。

  • 都市は家賃が高く需要が安定しているが、価格が高く利回りは低め
  • 地方は物件価格が安く利回りは高いが、空室リスクや人口減少の影響が大きい

つまり、**「安定性を取るか」「収益性を取るか」**という選択になることが多いのです。


目的によって選ぶべき場所は変わる

結論として、不動産投資の目的によって都市と地方のどちらを選ぶべきかは変わります。

  • 安定重視の投資(長期保有・年金対策・事業の安定収益源)
     → 都市部の物件が向いている
  • 高利回りを狙った攻めの投資(短期回収・節税・キャッシュフロー重視)
     → 地方物件にチャンスがある

重要なのは、単純に「都市がいい」「地方がいい」と決めつけるのではなく、自分の投資目的・資金力・リスク許容度に合わせて判断することです。


都市投資と地方投資の特徴を比較する理由

なぜ都市と地方の違いを明確に整理する必要があるのでしょうか?

  • 不動産投資は数千万〜億単位の資金が動くため、判断ミスが事業に直結する
  • 節税や法人資産形成など、税務面の影響もエリアによって異なる
  • 出口戦略(売却・承継)を考えると、エリア選びの影響は10年先まで残る

そのため、「都市と地方の特徴を正しく理解して比較する」ことが、最初の一歩として不可欠です。

都市で不動産投資をするメリット

安定した賃貸需要

都市部は人口集中が続いており、学生・社会人・単身赴任者・ファミリー層など幅広い需要があります。
特に東京、大阪、名古屋、福岡といった大都市圏では、賃貸住宅の需要が高く、空室リスクが低いのが大きな強みです。

将来の資産価値の下支え

都市部は地価や物件価格が比較的安定しています。大規模な再開発が行われているエリアでは、将来的な値上がりが期待できるケースもあります。
出口戦略として「売却」が視野に入れやすい点も特徴です。

金融機関の評価が高い

都市部物件は金融機関からの評価が高く、融資を受けやすい傾向があります。融資期間を長めに設定できるケースも多く、レバレッジを効かせやすい点は大きなメリットです。


都市で不動産投資をするデメリット

物件価格が高い

都市部は物件価格が高額で、初期投資額が大きくなります。例えば、都内のワンルーム区分でも2,000万円前後、一棟アパートなら1億円以上という価格帯が珍しくありません。

利回りが低い

都市部の利回りは表面で4〜6%程度が一般的です。地方と比べると収益性は低く、キャッシュフローを重視する投資家には物足りないこともあります。

競争が激しい

投資家や法人需要が集中しているため、優良物件はすぐに売れてしまいます。スピード感のある意思決定が求められる点はデメリットともいえます。


地方で不動産投資をするメリット

物件価格が安い

地方は都市部に比べて物件価格が大幅に安いため、少ない自己資金で始められます。
例:同じ家賃5万円のワンルームでも、

  • 都内:2,000万円前後
  • 地方都市:500〜800万円

といった差があります。

利回りが高い

地方物件は価格が安い分、利回りが高くなる傾向があります。表面利回りで8〜12%という数字も珍しくありません。キャッシュフローを重視する投資家にとっては魅力的です。

節税効果を得やすい

価格が低いため、減価償却費を活用しやすい点もポイントです。法人や個人事業主が節税目的で活用するケースも多く見られます。


地方で不動産投資をするデメリット

空室リスクが高い

人口減少や都市部への人口流出により、地方では空室リスクが高まります。賃貸需要が限られる地域では、入居者確保が難しいことがあります。

売却が難しい

都市部と違い、地方は買い手が限られています。出口戦略として売却を考える場合、希望価格で売れない、あるいは長期間売れ残るリスクが伴います。

管理コストがかかる

投資家が都市部に住んでいて地方に物件を持つ場合、管理会社に依存することになります。距離があるため、自主管理が難しく、管理コストが増えることがあります。


都市と地方の比較表

項目都市投資地方投資
賃貸需要高い、安定している地域差大、人口減少リスクあり
物件価格高い(数千万〜億単位)安い(数百万円から可)
利回り低い(4〜6%程度)高い(8〜12%程度)
融資受けやすい、条件有利厳しい場合あり
空室リスク低い高い
売却しやすいしにくい
管理自主管理もしやすい管理会社依存になりやすい

都市での不動産投資の事例

事例1:東京都内のワンルームマンション

  • 購入価格:2,500万円
  • 月額家賃:9万円
  • 年間家賃収入:108万円

シミュレーション

  • 表面利回り:108万円 ÷ 2,500万円 = 4.3%
  • 管理費・修繕積立金・固定資産税など年間40万円を控除
  • 実質利回り:68万円 ÷ 2,500万円 = 2.7%

ポイント

利回りは低いが、空室はほとんどなく安定運用が可能。売却時も買い手が多いため、資産価値の保全に強みがある。


事例2:大阪市の一棟アパート

  • 購入価格:1億円
  • 満室時月額家賃:100万円
  • 年間家賃収入:1,200万円

シミュレーション

  • 表面利回り:1,200万円 ÷ 1億円 = 12%(※実際はもっと低い)
  • 管理費・修繕・税金などで年間300万円控除
  • 実質利回り:約9%

ポイント

規模は大きいが、入居需要が多い都市部では稼働率が高い。融資がつきやすく、長期安定投資に適している。


地方での不動産投資の事例

事例1:地方都市の中古アパート

  • 購入価格:2,000万円(8戸)
  • 月額家賃:4万円 × 8戸 = 32万円
  • 年間家賃収入:384万円

シミュレーション

  • 表面利回り:384万円 ÷ 2,000万円 = 19.2%
  • 空室率20%を想定すると収入は約307万円
  • 経費100万円を控除
  • 実質利回り:約10.3%

ポイント

数字上は高利回りだが、空室リスクと修繕リスクを常に抱える。エリアの需要を見誤ると赤字になる可能性もある。


事例2:地方の区分マンション

  • 購入価格:500万円
  • 月額家賃:3万円
  • 年間家賃収入:36万円

シミュレーション

  • 表面利回り:36万円 ÷ 500万円 = 7.2%
  • 管理費・修繕積立金・固定資産税で年間15万円控除
  • 実質利回り:約4.2%

ポイント

小額から始められるが、修繕費負担の影響を受けやすい。出口戦略として売却が難しいため、キャッシュフロー狙いの長期保有型が現実的。


事例比較まとめ

項目都市投資地方投資
購入価格高額(数千万〜億単位)低額(数百〜数千万円)
利回り低め(2〜6%実質)高め(8〜12%実質も可)
安定性高い(空室率低)低め(地域差が大きい)
売却のしやすさしやすい難しい場合あり
投資対象者長期的な安定を重視する投資家キャッシュフローを重視する投資家

具体例から見えること

都市投資は「安定性」「融資のしやすさ」「出口戦略」に強みがある一方で、利回りは低め。
地方投資は「高利回り」「少額で開始可能」という魅力がある反面、需要の見極めが命運を分けることが分かります。

不動産投資を始める前に押さえる行動ステップ

ステップ1:投資目的を明確にする

  • 安定した収入を長期的に得たい → 都市物件向き
  • 高利回りでキャッシュフローを重視したい → 地方物件向き
  • 節税や法人の資産形成を兼ねたい → 築古や地方も選択肢に

👉 「なぜ投資するのか」を明確にすると、自然と都市か地方かの方向性が見えてきます。


ステップ2:資金計画を立てる

  • 自己資金はいくら出せるか
  • 融資条件(金利・返済期間・融資割合)はどうか
  • 修繕・空室時の予備資金を確保できるか

都市物件は初期投資が大きく、地方物件は予備費用が鍵になるため、資金管理の考え方が異なります。


ステップ3:需要調査を徹底する

  • 都市:駅徒歩10分圏内か、再開発計画があるか
  • 地方:大学、病院、大手企業の工場など雇用のある場所か
  • 両方共通:人口動態、賃貸需要、空室率、家賃相場

👉 需要調査は**「現地を歩く」+「データを調べる」+「不動産会社に聞く」**の三本柱で行いましょう。


ステップ4:収支シミュレーションを行う

  • 都市物件 → 空室率を低め(3〜5%程度)に設定し、低利回りでも黒字を確認
  • 地方物件 → 空室率を高め(10〜20%)に設定し、修繕費も多めに計上して黒字か確認

「最悪のシナリオでも赤字にならないか」を基準にすることが重要です。


ステップ5:出口戦略を描いておく

  • 都市:将来的に売却しやすい、法人への売却も視野に
  • 地方:キャッシュフローを長く得ることを前提にし、売却は保守的に見込む

👉 都市か地方かにかかわらず、出口を見据えた投資であることが必須条件です。


チェックリストで自己診断

都市物件が向いている人

  • 初期投資額が大きくても安定性を優先したい
  • 融資を積極的に活用したい
  • 売却益や資産価値の維持を重視したい

地方物件が向いている人

  • 少額から不動産投資を始めたい
  • キャッシュフロー重視で高利回りを狙いたい
  • 築古再生やリノベーションに積極的に取り組める

まとめ:都市か地方かは「自分の戦略次第」

  • 都市は 安定性・資産性・融資のしやすさ が強み
  • 地方は 高利回り・低価格・節税余地 が魅力
  • どちらが正解かではなく、投資目的と資金力に応じて選ぶのが正解

本業とのバランス、リスク許容度、将来の出口戦略まで含めて考えることで、都市でも地方でも「成功する不動産投資」を実現できます。

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