不動産の買い替えで使える特例と税務メリット|居住用と事業用の違いを徹底解説

不動産の買い替えで使える特例と税務メリットをイメージしたイラストで、手のひらに乗った家とビルが矢印で交換される様子と、税務資料や円マークが描かれており、買い替えによる節税効果を視覚的に表現した画像。
目次

不動産の買い替えで節税できる仕組みを理解すると資産形成が加速する

自宅や投資用物件を売却して、新たな不動産へ買い替える――
このとき、多くの不動産オーナーが知らずに損をしてしまうのが 売却時の税金(譲渡所得税) です。

不動産売却益には

  • 所得税(15%)
  • 住民税(5%)
  • 復興特別所得税
    が課税され、合計 20%超 もの税負担になることもあります。

しかし、買い替えの場面では 複数の税務特例 を使うことで、この税負担を大幅に減らしたり、先送りしたりできます。

特に次のような悩みを持つ人は、特例を理解することで節税効果が大きくなります。

  • 自宅を売ってより広い家へ住み替えたい
  • 投資物件の老朽化で買い替えを検討している
  • 税金が高くて売却を躊躇している
  • 事業用不動産を入れ替えて収益改善したい
  • 節税しながらポートフォリオを整えたい

不動産の買い替えは、単なる入れ替えではなく
**税務を理解すれば“節税しながら資産拡大できる戦略”**です。

この記事では、不動産初心者にも分かりやすく

  • 買い替えで使える特例
  • 居住用・事業用の違い
  • 税務メリット
  • 注意点
  • 実例
    を体系的に解説していきます。

不動産を売却すると発生する税金の仕組み

まずは買い替えの前提となる「売却時の税金」を理解しましょう。


●不動産売却にかかる税金:譲渡所得税

不動産を売ると、売却益に税金がかかります。

計算式
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 諸費用)
課税所得 = 譲渡所得 × 税率(20%前後)

売却で1,000万円の利益が出た場合、
→ 約200万円以上の税金になります。


●長期と短期で税率が大きく違う

  • 5年超 → 約20%
  • 5年以下 → 約39%

買い替えのタイミングによって税率も変わるため、
特例を使わないと思わぬ税負担が発生します。


買い替え時に使える主な税務特例

不動産を買い替えるときに使える特例は、目的(居住用・事業用)によって異なります。

本記事では特に使う機会の多い次の3つを解説します。


●① 居住用財産の3,000万円特別控除

自宅の売却で最も使われる特例。
売却益から 最大3,000万円を控除 できるため、税金がゼロになるケースが多いです。


●② 居住用財産の買い替え特例(課税の繰り延べ)

売却益を課税せず、新しい家に買い替える場合に使える特例。
税金が完全ゼロになるのではなく、将来に繰り延べる仕組みです。


●③ 事業用不動産の買い替え特例(課税の繰り延べ)

賃貸物件や事務所・工場などの買い替え時に有効。
要件を満たせば、売却益に課税されません。


居住用と事業用で大きく違う税務メリット

買い替え特例は「居住用」か「事業用」かで要件が大きく異なります。

ここでは、違いを初心者でもわかるように整理します。


居住用は“減額”にも“繰延”にも強い

自宅の場合、有利な特例が非常に多いのが特徴です。

  • 3,000万円特別控除
  • 軽減税率の特例
  • 買い替えによる課税繰延
  • 譲渡損失の繰越控除

特に「売却益が出る」場合は
3,000万円特別控除+軽減税率 が最強コンビ。


事業用は“繰延が最強”

投資物件、事務所、店舗、工場、倉庫などは
3,000万円特別控除は使えません。

その代わりに
事業用不動産の買い替え特例(課税繰延)
が非常に使われます。

売却益が1,000万円でも、
→ 税金0円(繰延)
→ 新しい物件に課税を引き継ぐ
ため、キャッシュフローが大きく改善します。


居住用の売却で使える3,000万円特別控除

まずは最も使われる特例を解説します。

●適用要件

  • 住んでいた家である
  • 売却した年の前後2年で他の特例を使っていない
  • 家屋が一定の基準を満たす

●節税効果

売却益 = 4,000万円
3,000万円特別控除 → 課税対象は1,000万円
→ 税負担が大幅に減少

実質的に、
4,000万円までの利益でも税金ゼロになるケースが多い
人気の特例です。


居住用の買い替え特例(税金の繰り延べ)

“売って買い替える”ときに使われる制度。

●ポイント

  • 売却益にかかる税金を繰り延べる
  • 新しい家を売るときに課税される
  • 今の税負担を避けられるのでキャッシュが残る

●条件

  • 住んでいた家である
  • 売却前に住んでいたこと
  • 一定期間内に買い替える
  • 売却価格より高い物件へ買い替えるのが基本

事業用不動産の買い替え特例

不動産投資家が最も使う特例。

●メリット

  • 売却益に課税されない(繰り延べ)
  • 手取り資金を最大化できる
  • 物件の入れ替えがスムーズ
  • 築古物件 → 新築物件などへ移行しやすい

●適用対象

  • 賃貸アパート
  • 賃貸マンション
  • 店舗
  • 倉庫
  • 事務所

買い替え特例が強力な理由

●① キャッシュが残る

税金が繰り延べされるので、売却益全額を次の投資に回せます。

●② レバレッジを効かせやすい

自己資金が残るため、金融機関から見ても評価が良い。

●③ 資産入れ替えの自由度が高い

立地の良い物件へ積極的に移動できる。

居住用と事業用の特例を比較して違いを整理する

買い替え特例は「どの用途で使うか」で要件も節税効果も大きく変わります。
不動産初心者でも理解しやすいよう、要点を比較しながらまとめます。


●居住用(自宅)の特例

自宅の売却は生活に密接しているため、税制上もっとも優遇されています。

主な特例

  • 3,000万円特別控除
  • 軽減税率(10年以上所有で優遇)
  • 譲渡損失の繰越控除
  • 居住用買い替えの課税繰延

メリットの方向性

  • 税金を「減らす」
  • 税率を「引き下げる」
  • 損失を「節税に使える」

●事業用(投資物件・事務所・店舗など)の特例

事業用は、収益を生む投資として扱われるため、優遇策は少なめ。

主な特例

  • 事業用不動産の買い替え特例(課税の繰延)
  • 特定資産の買換え制度(一定の地域で有効)

メリットの方向性

  • 税金を「繰り延べる」
  • 手取り資金を最大化

直接的に税額をゼロにできるわけではありませんが、
売却益への課税を先送りできるため、資金効率が圧倒的に高まる特徴があります。


居住用・事業用の違いを分かりやすく図解

以下の表で違いがひと目で分かります。


【買い替え特例の比較表】

項目居住用事業用
3,000万円控除使える使えない
軽減税率使える使えない
買い替え特例要件を満たせば可原則使える(範囲広い)
節税方向税額そのものを減らす税金を繰り延べる
築古→新築の入れ替え
相続税対策への応用◯(収益増加により有利)

不動産の買い替えで起こりやすい失敗パターン

買い替え特例は強力ですが、判断を誤ると節税どころか逆に税負担が増えることもあります。

以下は税理士がよく見る“失敗例”です。


●① 適用期限を過ぎてしまう

買い替え特例には

  • 売却から購入までの期限
  • 一定期間内の申告期限

があり、1日でも遅れると適用外になります。


●② 売却価格より安い物件に買い替えてしまう(事業用)

事業用の買い替え特例は、売却価格より高い物件に買い替えるのが基本。
金額が小さいとその分だけ課税されてしまいます。


●③ 家族間売買で特例が使えない

不動産のオーナーチェンジで家族を介在させると、
「適正な売買と認められない」
として特例が使えなくなるケースがあります。


●④ 自宅として使っていなかった期間があって否認される

居住用特例は「実際に住んでいた」という実態が重要。
書面だけの住所移転では認められません。


●⑤ 事業用部分と居住用部分を混同している

店舗併用住宅・自宅併用事務所では
面積按分が必要で、特例の対象部分が変わります。

(例:住居70% → 特例対象は70%のみ)


実務でどう節税につながるのか

実際にどれくらい節税効果があるのか、具体的に見ていきましょう。


実例①:自宅売却で3,000万円控除を使うケース

  • 売却価格:6,000万円
  • 取得費など:3,000万円
  • 譲渡所得:3,000万円
  • 特別控除:3,000万円 → 課税ゼロ

本来であれば
3,000万円 × 20% = 600万円
の税金が発生するところがゼロになります。


実例②:投資物件の買い替えで税金0円(繰延)

  • 売却価格:5,000万円
  • 原価など:4,000万円
  • 売却益:1,000万円
  • 通常課税:200万円以上
    → 特例適用:税金ゼロで繰延

浮いた200万円がそのまま次の物件の頭金に回せるため、
自己資金が増え、融資も通りやすくなるメリットがあります。


実例③:築古アパート → 新築アパートへ買い替え

古くなった賃貸物件は

  • 修繕費が増える
  • 空室リスクが高まる
  • 家賃が下落

という問題があります。

買い替え特例を使うことで、
税金を繰延しつつ収益改善が可能です。


節税だけでなく相続税対策にも有利

買い替えは相続税対策としても効果があります。


●建物の評価が低く抑えられる

相続税評価は

  • 土地:路線価
  • 建物:固定資産税評価額

で決まります。

新築アパートなどは収益が高いのに建物評価は低いため、
相続税評価<収益価値 の構図を作りやすくなります。


●現金よりも不動産の方が評価を下げやすい

現金1億円 → 評価1億円
不動産1億円 → 評価6,000万~8,000万円
というケースもあります。

買い替えと相続税対策は相性が非常に良いです。


買い替えをスムーズに行うための実務ステップ

最後に、初心者が迷わないよう行動手順をわかりやすくまとめます。


ステップ1:今の不動産の評価と税額試算

売却益がどれくらい出るのか、まずは数字を把握します。

  • 売却価格
  • 残ローン
  • 取得費
  • 諸費用
  • 利益と税額

を試算しましょう。


ステップ2:買い替え特例を使えるかチェック

居住用なのか、事業用なのかで要件が異なります。
税務署の指針・税理士の判断を参考にしましょう。


ステップ3:売却と購入のスケジュール調整

特例は“期限管理”がすべてです。

  • 売却契約日
  • 引渡し日
  • 購入契約日
  • 申告期限

を整理しましょう。


ステップ4:融資・ローンの調整

投資物件であれば、銀行との連携は必須。

  • 既存のローン残債
  • 新しい物件の融資条件
  • 属性評価

を確認します。


ステップ5:購入後に税務申告

買い替え特例は
申告しないと適用されません。

売却した翌年の確定申告で

  • 必要書類
  • 契約書
  • 証明書
    を添付して提出します。
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