家賃改定を成功させるために知っておくべき重要な視点
不動産投資を行ううえで、家賃収入はキャッシュフローの中心です。
しかし築年数が進み、周辺相場が変化し、物価・光熱費・修繕費が上昇しても、
「長く住んでくれているから…」
「値上げはトラブルになりそうで怖い…」
と躊躇するオーナーは多くいます。
けれど家賃改定は、適切なタイミングで正しい方法を取れば、入居者に不満を与えず、むしろ納得してもらいながら実現できます。
家賃改定は決して“強引な値上げ”ではなく、物件価値に見合う適正な価格へ戻す調整です。
そのために必要なのが、
- 正しいタイミングを見極めること
- 入居者にとって納得感のある理由を示すこと
- 交渉の進め方を理解しておくこと
この3つです。
家賃を適正化できれば、年間収益は大きく改善し、長期的な物件価値維持にもつながります。
家賃改定を先送りにすると起こる問題点
家賃改定を行わず「現状維持」を続けると、次のような損失が蓄積します。
●家賃改定を先送りするデメリット
| 影響項目 | 内容 |
|---|---|
| 収益悪化 | 物価・修繕費が上昇するのに家賃が据え置きのため、実質利回りが低下する |
| 修繕費不足 | 適正家賃が取れていないと、計画的な修繕費の確保が難しくなる |
| 物件価値の低下 | 家賃が周辺より安すぎると、物件の収益価値が下がる |
| 将来の値上げが困難に | 長期入居ほど値上げのハードルが高くなる |
特に近年は、以下のようなコストが上がり続けています。
- 建築資材の高騰
- 設備交換費(エアコン・給湯器など)の上昇
- 火災保険料の上昇
- 管理会社の委託費増加
この状況で家賃を据え置くのは、オーナーの収益構造に大きな影響を与えます。
つまり、家賃改定は「今の収益を上げるため」というだけでなく、
将来的な物件維持のために不可欠な経営判断 なのです。
家賃改定を成功させるための方向性
家賃改定には「値上げ」「値下げ」「据え置き」という3つの選択肢がありますが、
オーナーが最も難しく感じるのは “値上げの伝え方” です。
結論として、家賃改定を成功させるポイントは次の3つに集約されます。
■家賃改定の成功ポイント
- 適切なタイミングで実施する
- 入居者が納得できる理由を丁寧に説明する
- 複数の交渉パターンを準備しておく
この3つを押さえることで、
「値上げを伝えた瞬間に退去された」
「納得してもらえないままトラブルになった」
というケースを防ぐことができます。
家賃改定のタイミングが重要である理由
家賃は、ただ上げれば良いわけではありません。
入居者の生活環境や契約期間、周辺相場の動向など、総合的に判断する必要があります。
家賃改定が受け入れられやすいタイミングには共通点があります。
●家賃改定の適切なタイミング
①更新契約のタイミング
賃貸物件の多くは2年更新です。
このタイミングは「契約見直しが一般的に行われる時期」なので、
家賃改定の提案がもっとも受け入れられやすくなります。
②エリアの相場が上昇している時期
次のような状況があれば、家賃見直しのチャンスです。
- 物件周辺で新築・リノベ物件が増えて賃料相場が上昇
- 駅前再開発で利便性が向上
- 大学・大企業の移転で需要増加
- 人気路線の乗り入れ開始
「周辺相場」と比較して家賃が安すぎる場合、値上げに対する納得感が得られやすいです。
③設備投資を行った直後
次のような設備を導入した場合は、値上げの理由が説明しやすくなります。
- TVモニターホン
- 温水洗浄便座
- 浴室乾燥機
- システムキッチン
- クロス・床の張り替え
設備投資があると“価値が上がった”ことを入居者も理解しやすく、交渉がスムーズです。
④長期入居者の契約見直し時
5年以上入居している場合、家賃が周辺相場に比べて安くなっている可能性が高いです。
段階的な値上げであれば、退去リスクを抑えながら改定を実施できます。
入居者に納得してもらうための説明の仕方
家賃改定の成功において最も重要なのが、
入居者への“説明の仕方” です。
人は「値上げ」という言葉に拒否反応を示しやすいですが、
納得できる理由があれば、一定の理解を示してくれます。
●納得感を生む説明のポイント
①相場データを活用する
「周辺相場と比較して適正化させていただきたい」という説明は非常に有効です。
例:
- SUUMO・HOME’Sで同条件の物件より5000円以上安い
- 同マンション内で他の部屋がより高い賃料で成約している
数字を提示することで、感情ではなく“合理的な判断”として受け入れやすくなります。
②物件価値の向上を明確に伝える
設備投資・修繕など具体的な改善点を伝えると納得感が高まります。
例:
- 防犯対策のためTVモニターホンを設置
- 在宅需要に合わせて高速Wi-Fiを導入
- 劣化した床を新品に張り替えた
「入居者の生活がより良くなる」改善内容は特に効果的です。
③管理コストの増加を説明する
物価上昇や保険料の高騰は入居者も理解しているため、有効な理由になります。
例:
- 火災保険の値上げ
- 管理委託費の上昇
- 原材料高騰による修繕費の増加
ただし「オーナーの利益のためです」という印象にならないよう、
必要な維持管理の一環であることを丁寧に説明することが重要です。
④段階的な値上げを提案する
一度に大幅改定すると退去リスクが高まります。
例としては:
- 毎月3,000円の値上げ→今年1,500円、来年1,500円の2段階方式
- 新しい設備投資の年と翌年で2回に分けて調整
入居者の負担が分散され、交渉がまとまりやすくなります。
入居者との家賃改定をスムーズに進める交渉術
家賃改定の成否は「どんな言い方で伝えるか」が非常に重要です。
強引に進めると退去につながる一方、誠実で丁寧な説明ができれば、多くの入居者が理解を示してくれます。
以下では、入居者とのコミュニケーションにおいて押さえておくべきポイントをまとめます。
●家賃改定のコミュニケーションで重要な3原則
- 感情に配慮しつつ、理由を明確に伝える
- 相手に一定の選択権を与える
- 代替案を複数提示し、妥協点を見つける
この3つを守ることで、入居者は「自分が軽視されていない」と感じ、話し合いに前向きになりやすくなります。
納得を得ながら家賃改定を伝える具体的な会話例
ここでは、実際の管理会社や大家が使っている“トラブルになりにくい伝え方”を紹介します。
●会話例①:更新時に家賃改定を伝える場合
「この2年間で周辺エリアの賃料相場が変化しており、同じマンションでもご入居者様より高い賃料で新規契約されるお部屋が増えている状況です。
一方で、これまで大きな家賃改定を行わず据え置いてきましたが、修繕コストや管理費用が上昇していることもあり、今回の更新タイミングで賃料を適正化させていただきたいと考えております。」
ポイント:相手に非がある言い方は避け、あくまで“状況として必要な調整”であることを示す。
●会話例②:長期入居者に段階的値上げを提案する場合
「長く住んでいただいていることに大変感謝しております。
そのため、急な大幅改定とならないよう、可能な限り負担が小さくなる方法を検討しました。
まずは来年まで月額1,500円、その翌年にさらに1,500円という形で、段階的に賃料を調整させていただければと思っております。」
ポイント:継続入居への感謝を必ず伝える。段階案を提示することで納得感を得やすい。
●会話例③:設備投資を理由に家賃改定する場合
「今回、防犯性向上のためTVモニターホンを新設し、さらにWi-Fiの品質も改善いたしました。
入居者の皆さまがより快適にお住まいいただける環境が整ったため、設備投資に伴う適正な賃料への調整をお願いしたいと考えております。」
ポイント:入居者にとって“メリットのある改善”であることを強調する。
家賃改定に成功した実例紹介
ここでは、実際に多くのオーナーが経験している成功パターンを紹介します。
●成功例①:更新タイミングで5,000円の値上げに成功
物件:駅徒歩8分の1K、築15年
改善前問題:
- 長期入居者(4年目)
- 周辺相場より8,000円も安い
- 入居者は静かに暮らしたい20代女性
対応内容:
- 周辺相場データを一覧化して説明
- 防犯カメラの新設と共用部LED化を実施
- 「環境改善に伴う適正化」という形で値上げ提案
結果:
5,000円の値上げをスムーズに受け入れてもらい、退去リスクも回避。
●成功例②:段階的な値上げによりファミリー層が継続入居
物件:郊外の2LDK、築20年
改善前問題:
- 10年以上の長期入居
- 家賃が相場より1万円以上低い
- 子育て家庭で退去リスク高い
対応内容:
- 段階的値上げ案(1,000円 × 3年)を提示
- 給湯器の交換を約束し、劣化設備の改善を提案
結果:
家賃は3年で3,000円アップし、入居者はそのまま継続。
●成功例③:設備改善とセットで1万円以上のアップに成功
物件:都市部ワンルーム
改善前問題:
- 設備が古く、周辺新築に比べ魅力が弱い
- 大幅改定は反発のリスクあり
対応内容:
- ユニットバス交換、 Wi-Fi無料化、宅配ボックス設置
- 「リノベーションによる価値向上」を根拠に改定
- 新規募集時の家賃設定を見直し
結果:
新規募集で1.2万円アップして即入居が決定。
家賃改定時に注意しておくべき法律・契約のポイント
家賃改定は感覚で行うのではなく、賃貸借契約と関連法律の理解が欠かせません。
●押さえておくべき法律とルール
■借地借家法
入居者保護を目的とした法律であり、
「一方的な値上げ」は認められません。
値上げには、合理的な理由と入居者の合意が必要です。
■賃貸借契約書の家賃改定条項
契約書には、多くの場合「賃料改定条項」が含まれています。
例:
物件価値・租税公課・経済事情の変動があった場合に協議して改定できる。
この条項を根拠に、管理会社と連携して進めることが一般的です。
■更新時の通知期限
更新日の「1〜2ヶ月前」までに通知することが一般的ですが、
管理会社の規定によって異なるため必ず確認しましょう。
今日から実践できる家賃改定の行動ステップ
家賃改定は準備が8割です。
以下のステップを踏めば、初心者でも“トラブルなく適正家賃へ近づける”ことができます。
●行動ステップ①:周辺相場の調査
SUUMO・HOME’S・アットホームで
- 同じ間取り
- 同築年数
- 同エリア
の平均賃料をチェック。
一覧表にまとめると説得材料として使えます。
●行動ステップ②:物件状態と設備の把握
- 破損している箇所はないか
- 設備は古くなっていないか
- 新規設備投資が可能か
これにより、値上げの“理由付け”が強化されます。
●行動ステップ③:交渉パターンを複数用意する
オーナー側の柔軟性が高いほど、話し合いがまとまりやすくなります。
例:
- 値上げ額の分散
- 設備改善とのセット提案
- 契約期間を延長する特典
●行動ステップ④:感情に寄り添った説明を心がける
一方的な改定ではなく
「より良い環境で住み続けていただきたい」という姿勢が大切です。
●行動ステップ⑤:管理会社と連携する
管理会社は入居者との距離が近く、最適な伝え方を知っています。
プロの力を借りることで、成功率が大きく高まります。

