赤字でも経費は使える?不動産投資と損益通算の仕組みを徹底解説

赤字でも経費が使えるかをテーマにした不動産投資と損益通算の考え方を表すアイキャッチ画像。建物、帳簿、電卓、損益通算を示す矢印と文字入り。
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不動産投資と赤字の現実

不動産投資というと「家賃収入で安定した利益が得られる」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし実際には、購入直後の減価償却費や借入金の利息、修繕費などの支出がかさみ、帳簿上は「赤字」になるケースも少なくありません。

このような赤字は一見デメリットに見えますが、税務の仕組みを理解すれば「経費として認められる支出」として活用し、節税効果を得られる場合があります。


赤字でも経費を計上できるのか?

ここで多くの投資家・経営者が抱く疑問が「赤字なのに経費は使えるのか?」という点です。

結論からいえば、事業や不動産経営に必要な支出であれば赤字であっても経費として認められます
例えば以下のような支出です。

  • 借入金の利息
  • 建物や設備の減価償却費
  • 管理会社への委託費
  • 固定資産税や火災保険料

これらは、収入を得るために不可欠な支出であり、赤字か黒字かに関わらず経費として処理可能です。


損益通算という考え方

赤字を活かすうえで重要なのが「損益通算」という制度です。
損益通算とは、不動産所得が赤字の場合に、その赤字を他の所得(給与所得や事業所得など)と相殺できる仕組みです。

例えば、サラリーマンが給与所得を得つつ不動産投資で赤字を出した場合、その赤字を給与所得から差し引くことで所得税や住民税を軽減できます。

👉 つまり、不動産投資の赤字は必ずしも悪いことではなく、節税の武器にもなり得るのです。


税務署が注目するポイント

一方で、損益通算を利用して節税を狙う際には注意も必要です。
税務署は以下の点を厳しく確認します。

  • 本当に収益を得るための支出かどうか
  • 節税目的だけの不自然な経費計上がないか
  • 継続的に赤字が続き、事業性が認められないケースでは「損益通算否認」とされる可能性

👉 正しい理解と適切な会計処理がなければ、かえって税務リスクを高めてしまう点に注意が必要です。

赤字でも経費は認められるのか

結論として、不動産投資に関連する必要経費は赤字でも認められます
なぜなら、経費は「収益を得るために直接必要な支出」であり、黒字・赤字の状況には左右されないからです。

例えば、建物の修繕費や管理費は賃貸経営を維持するために不可欠であり、収益がマイナスでも経費として計上できます。
また、減価償却費や借入金利息なども同様に、事業の性質上必ず発生する支出として認められます。


損益通算の仕組みと効果

赤字が出ても経費が認められることで活用できるのが 損益通算 です。

  • 不動産所得がマイナス
  • 給与所得や事業所得がプラス
  • 両者を合算して課税所得を減らせる

この流れによって、所得税や住民税の負担を軽減できます。

具体例

  • 給与所得:500万円
  • 不動産所得:▲100万円
  • 損益通算後の課税所得:400万円

この場合、給与500万円に課税されるよりも税負担が減るため、赤字が節税効果を生むことになります。


損益通算が認められる所得区分

損益通算できるのは、原則として以下の4つの所得です。

  1. 不動産所得(賃貸収入)
  2. 事業所得(個人事業の収益)
  3. 山林所得
  4. 譲渡所得の一部

特に給与所得との通算はサラリーマン投資家にとって大きなメリットとなります。


損益通算が制限されるケース

ただし、すべての赤字が通算できるわけではありません。以下の場合は制限があります。

  • 土地取得に関する借入金利息:原則として損益通算の対象外
  • 別荘など生活に通常必要でない資産の赤字:通算不可
  • 仮想的な赤字(租税回避目的のスキーム):税務署に否認される可能性大

👉 つまり、損益通算は「真っ当な不動産経営をしている場合」にのみ有効に働く制度なのです。


経営者が知っておくべき結論

  • 赤字でも経費は使える
  • 損益通算によって他の所得と相殺できる
  • ただし制度には制限があり、不自然な赤字は認められない

👉 これらを踏まえたうえで、不動産投資の赤字は「無駄な損失」ではなく「節税の仕組み」として捉えることが重要です。

赤字でも経費が認められる理由

1. 経費の本質は「収益獲得のための支出」

税務上の経費は、「収益を得るために必要な支出」と定義されています。
収益が赤字か黒字かは関係なく、支出の性質が問われるのです。

  • 建物の修繕費 → 賃貸収益を維持するために不可欠
  • 管理会社への委託費 → 入居者対応や家賃回収に必要
  • 借入金利息 → 賃貸物件購入に直結する支出

👉 こうした支出は赤字でも「収益に結びつくコスト」として認められます。


2. 長期的視点での収益性

不動産投資は短期的に赤字でも、長期的には黒字化するケースが多くあります。
特に減価償却費は現金支出を伴わないため、帳簿上は赤字でもキャッシュフローはプラスという状況も珍しくありません。

👉 こうした事情から、税法は「一時的な赤字でも経費を認める」仕組みにしているのです。


損益通算が用意されている背景

1. 所得税の公平性を保つため

もし不動産所得が赤字でも、それを給与所得などと通算できなければ、実際の手取りに比べて過大な税負担を強いられることになります。
損益通算は「総合課税」の理念に基づき、納税者の実態に即した税負担にするための制度です。


2. 投資促進のため

不動産投資は社会的にも住宅供給や地域活性化に貢献します。
赤字が出ても税制上の救済措置を設けることで、投資へのハードルを下げ、経済全体の活性化を促す狙いがあります。


3. 赤字利用の濫用を防ぐ仕組み

一方で、制度を悪用した「節税スキーム」が過去に横行したことから、現在では損益通算には制限が設けられています。

  • 土地取得の利息が通算できない
  • 別荘・リゾート物件の赤字は認められない

👉 これは、制度本来の趣旨(真っ当な不動産経営支援)から逸脱する行為を防ぐためです。


税務署が注視する背景

税務署は「事業性があるかどうか」を重視します。
赤字でも事業性があれば経費・通算を認めますが、明らかに節税目的だけのスキームであれば否認対象になります。

👉 経営者にとっては、事業性の裏付け(収益計画や実際の運営実態)を示せることが非常に重要になります。

赤字でも経費を活かすための実践ステップ

1. 経費の根拠を明確にする

  • 領収書や契約書を保存し、支出の事業関連性を示す
  • 家事関連費との区分(按分)が適切かをチェック
  • 減価償却費の計算根拠を明確にしておく

2. 損益通算の対象を確認する

  • 不動産所得の赤字が給与所得や事業所得と通算できるかを確認
  • 土地取得の利息や別荘などは対象外になることを把握
  • 制限対象を避け、正しく申告することが節税の基本

3. 長期的な収益計画を立てる

  • 初期は赤字でも将来黒字化する見込みを数値で示す
  • キャッシュフローと帳簿上の損益を切り分けて管理する
  • 銀行融資返済と実際の手取り収益を意識して運営する

4. 税務調査を想定する

  • 「事業性があるか」を証明できるように資料を整える
  • 家族への不自然な給与、過大な修繕費計上などはリスク大
  • 専門家(税理士)に事前チェックを依頼すると安心

赤字活用チェックリスト

  • 支出の領収書・契約書をきちんと保存しているか
  • 経費が事業関連性を持っていると説明できるか
  • 土地利息など損益通算できない経費を把握しているか
  • 赤字が将来黒字に転換する計画を持っているか
  • 税務調査で説明できる体制を整えているか

👉 このチェックリストを満たすことで、赤字を効果的に節税へとつなげられます。


まとめ:赤字は「損失」ではなく「節税のチャンス」

  • 赤字でも経費は認められる
  • 損益通算で他の所得と相殺すれば税負担を減らせる
  • 制度の背景を理解し、制限を把握すれば安心して活用可能
  • 大切なのは「事業性の証明」と「長期的な視点」

👉 赤字は単なる損失ではなく、適切に使えば税務上の強力な味方になります。

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