不動産を子どもに贈与するときの税金と節税テクニック|失敗しない生前贈与のポイント

高齢の父親が子どもに家の模型を手渡し、不動産の贈与をイメージさせる構図のイラスト。背景には税金書類、電卓、家のアイコン、円マークなどが描かれ、「不動産を子どもに贈与するときの税金と節税テクニック」というタイトルが表示された画像。
目次

不動産の生前贈与は相続対策として非常に有効になる理由

不動産を所有していると、相続時に高額な相続税が発生しやすくなります。相続税は「相続が発生した時点」の評価で計算されるため、物件価格や土地の価値が高騰している場合、負担が想定より大きくなるリスクがあるからです。
このリスクを避けるため、不動産オーナーの間で活用されることが多いのが「生前贈与」です。生前に子どもへ不動産を贈与しておくことで、将来の評価上昇リスクを回避できるだけでなく、贈与税の制度や特例を活用すれば、相続全体の税負担を大幅に抑えられる可能性が高くなります。
また不動産は現金のように分割しやすくないため、突然相続が発生してから分割方法を決めると「争いの火種」になりがちです。生前に贈与しておくことで、財産の配分を明確にし、家族間のトラブルを未然に防ぐ効果もあります。

不動産の贈与は、節税・資産承継・円満相続のすべてに関わる重要なテーマです。初心者でも理解できるように、基礎から丁寧に解説していきます。


不動産の贈与でトラブルが生まれやすい理由

生前贈与には多くのメリットがありますが、理解が浅い状態で進めるとトラブルや無駄な税金負担を生むケースが少なくありません。特に不動産には以下のような注意点があります。

●不動産の“贈与税評価額”を誤解している

不動産の贈与税は、購入価格ではなく「相続税評価額(路線価や固定資産税評価)」で決まります。思っているより評価が高いこともあり、想定外の贈与税が発生するケースがあります。

●贈与税の基礎控除110万円を過信してしまう

現金なら110万円まで非課税ですが、不動産は評価額が何百万円以上になることが一般的です。したがって、110万円ではほぼカバーできず、“基礎控除を使えば節税できる”という誤解が生まれがちです。

●名義を変えるだけで終わりだと思ってしまう

不動産の贈与には以下の費用や手続きが伴います。

  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 司法書士への依頼料
  • 固定資産税の負担変更
    これらを考慮しないと、想定より費用が膨らむ可能性があります。

●兄弟間の不公平感が発生しやすい

不動産は「1つの資産を複数人で平等に分けにくい」という性質があり、後からトラブルになるケースが多い資産です。生前に意向を伝えないと、争いにつながります。

こうした落とし穴を避けるためにも、制度の仕組みと節税テクニックを正しく理解しておくことが重要です。


不動産の贈与で発生する主な税金のしくみ

不動産を贈与すると、贈与者・受贈者の両方に税金が発生する可能性があります。まずは贈与で関わる税金を整理しておく必要があります。

●① 贈与税(子ども側に発生)

不動産を無償で受け取ると、子どもに贈与税がかかります。贈与税は相続税より税率が高く、以下の課税方式が基本となります。

  • 暦年課税:110万円を超える部分に累進税率(10〜55%)
  • 相続時精算課税:2,500万円まで非課税、超えた分は一律20%

特に暦年課税は税率が高いため、不動産の贈与には「相続時精算課税」を使うケースが多いです。


●② 不動産取得税(子ども側)

不動産を取得すると、贈与であっても不動産取得税が発生します。
通常:固定資産税評価額 × 4%
(住宅用土地・建物は軽減措置で3%になるケースあり)


●③ 登録免許税(名義変更時)

登記名義を変更する際に必要な税金です。
贈与:固定資産税評価額 × 2%
(相続は0.4%と安いため、生前贈与との差が大きい部分)


●④ 譲渡所得税(親側)

通常、不動産を贈与すると譲渡とはみなされませんが、以下の場合は課税される可能性があります。

  • 子が親に負担を求めた場合(負担付贈与)
  • ローン残債の引継ぎがある場合
    負担付贈与は譲渡所得課税が発生しやすいため注意が必要です。

税負担を抑えるために使える生前贈与の選択肢

不動産の贈与は税負担が大きくなるリスクがありますが、制度を正しく使えば大幅に抑えることができます。ここでは節税効果の大きい方法を網羅的にまとめます。

●相続時精算課税制度の活用(最も一般的)

不動産贈与でよく使われる方法です。

  • 2,500万円まで贈与税が非課税
  • 超えた部分だけ20%で課税
  • 相続時に再計算されるが、評価上昇分は相続財産に加算されない

相続時精算課税は、評価が上がりそうな不動産や、将来値上がりする可能性の高い土地に向いています。


●住宅取得資金の贈与(子どもが家を買う場合)

不動産そのものではありませんが、将来的に親の不動産を売却し、その資金を子どもの住宅取得に充てる方法です。

  • 非課税枠が大きい
  • 手続きが比較的簡単
  • トラブルが少ない

子どもが新居を購入するタイミングで使える強力な制度です。


●持ち分贈与で少しずつ移す方法

不動産の“一部だけ”を贈与し、年を分けて持ち分割合を増やしていく方法です。
メリット:

  • 課税価格を分散できる
  • 将来の値上がり分を子の持ち分に移せる

ただし司法書士の費用や登録免許税が贈与のたびに必要になるデメリットがあります。


不動産贈与を成功させるためのポイント

節税だけでなく、贈与後のトラブル防止や、親子双方の資産管理の観点も重要です。

●節税と分割のバランスを考える

不動産1つを特定の子に贈与すると「不公平だ」と感じられることがあります。
節税だけではなく、家族全体のバランスを考えた贈与が重要です。

●親が住む場合は“使用貸借”のルールを理解する

贈与後に親が住み続ける場合、「使用貸借」とみなされるため、相続税評価に影響が出ることがあります。
生前の居住状況は後の課税に直結するため、慎重に検討する必要があります。

●ローンが残っている不動産は負担付贈与に注意

負担付贈与は親に譲渡所得が発生し、税金が重くなることがあります。
ローン完済後に贈与するか、借入の名義変更を含めて計画する必要があります。

不動産贈与をめぐる具体的な節税パターンの紹介

ここからは、実際に多くの不動産オーナーが活用している贈与テクニックを、ケース別にわかりやすく紹介していきます。贈与税・登録免許税・不動産取得税などを含めた総合的な節税効果を理解できるよう、実務レベルの視点から解説します。


●ケース1:評価額が今後上がりそうな土地を早めに贈与する

特に都市部の土地は、開発計画・人口流入・再開発などによって評価が上昇することがあります。

【節税ポイント】

  • 生前贈与 → 評価が今より低い状態で移転できる
  • 将来の値上がり分は子どもの財産として扱われる
  • 相続時に高額な税負担が生じるリスクを避けられる

例:
評価額3,000万円 → 10年後に5,000万円へ上昇
➡ 3,000万円の段階で贈与するほうが相続より大幅に有利。

特に相続時精算課税との相性がよく、税負担を抑える王道パターンです。


●ケース2:賃貸アパートの“持ち分”だけ少しずつ贈与する

賃貸アパートは、以下の理由から「圧縮された評価額」になる傾向があります。

  • 借家権割合が適用される
  • 貸家建付地評価が適用される
  • 入居状況により評価が下がる

そのため、持ち分移転でも節税効果が高くなります。

【メリット】

  • 年ごとに持ち分を分割すれば、課税価格を分散できる
  • 同じ不動産でも「少しずつ贈与」するだけで節税効果は大きい

【注意】

  • 贈与するたびに登録免許税・司法書士報酬が必要
  • 贈与の回数が多いほどコストも増える

中規模アパートを持つオーナーの間でよく使われるテクニックです。


●ケース3:親名義の自宅を贈与して子に住んでもらう

親の自宅を子どもに贈与すると、固定資産税や修繕費などの支出面でも軽減が生まれます。

【節税ポイント】

  • 使用貸借による評価減の効果が残る場合もある
  • 固定資産税の負担を早めに移せる
  • 将来の相続争いを防ぎやすい

ただし、親が住み続けると「名義が子なのに親が住んでいる」状態となり、形式だけの贈与と見なされるリスクがあるため、専門家の確認が必要です。


●ケース4:ローン残あり物件は“負担付贈与”に注意する

ローンがある物件を贈与すると、以下のような課税が発生する可能性があります。

【親側】

  • ローン負担分が「対価」とみなされ、譲渡所得が発生
  • 結果として所得税・住民税が発生

【子ども側】

  • ローン負担分を対価とみなされ、不動産取得税や登録免許税の課税対象

負担付贈与は一気に税金が重くなるため、ローン完済後に贈与したほうが安全です。


実務で見落としがちなポイントとその対策

不動産贈与には複数の税金や制度が絡むため、実務で見落とされやすいポイントがあります。ここではトラブル防止のための重要チェックポイントをまとめます。


●公証役場で贈与契約書を作成しておく

不動産の贈与では、 verbally(口約束)だけではトラブルの火種になります。
特に複数の子どもがいる場合、贈与の事実を明確に記録しておきましょう。

【メリット】

  • 将来の争族リスクを軽減
  • 税務調査でも説明しやすい
  • 名義変更後の「実態」を裏付けられる

●固定資産税の負担変更日を確認する

不動産の名義変更後も、その年の固定資産税は原則として贈与者に課税されます。
負担割合は当事者で決める必要があります。


●贈与後の管理責任が子に移る点に注意

不動産は管理コストがかかる資産です。
以下の費用は原則として子どもが負担します。

  • 修繕費
  • 共用部の管理費
  • 町内会費
  • 火災保険料

贈与前にこれらの負担について話し合うことで、後の不満を避けることができます。


●相続人が複数いる場合は遺留分に注意

贈与した不動産が遺留分侵害となる可能性があります。
生前贈与は相続のバランスに影響するため、兄弟姉妹間の合意形成が重要です。


不動産の贈与をスムーズに進めるための準備ステップ

最後に、実際に不動産を贈与する際に必要な流れを、初心者でも分かるようチェックリスト形式でまとめます。


●ステップ1:不動産の評価額を調べる

まず対象不動産の評価額を把握します。

  • 固定資産税評価証明書
  • 路線価図(国税庁)

評価額によって、贈与税・登録免許税などが決まるため、最初の重要ステップです。


●ステップ2:制度(暦年課税・相続時精算課税)を選ぶ

不動産の贈与では 相続時精算課税が選択されることが多い ですが、以下のような注意点があります。

【相続時精算課税】

  • 一度選ぶと暦年課税に戻れない
  • 将来の相続への影響が大きい

税理士と相談しつつ、最適な制度を選ぶことが重要です。


●ステップ3:贈与契約書を作成する

贈与契約は書面で交わすのが原則です。
公証役場での作成なら信頼性が高く、将来の証拠として機能します。


●ステップ4:登記申請を行う(司法書士に依頼可)

必要な手続き:

  • 登録免許税の納付
  • 名義変更登記
  • 必要書類の準備(印鑑証明、登記識別情報など)

●ステップ5:贈与税申告(子ども側)

贈与があった翌年の2月1日〜3月15日に申告します。
相続時精算課税の場合、申告は必須です。


●ステップ6:固定資産税の負担調整

贈与後の負担割合を取り決めておき、双方が納得した形で進めます。


不動産の贈与は“節税”と“将来の相続整理”の両方に効く

不動産を子どもに贈与することは、税金面でのメリットが大きいだけでなく、家族の資産承継をスムーズにする効果もあります。

特にメリットが大きいのは以下のようなケースです。

  • 評価額が上がりそうな不動産を持っている
  • 将来、子どもに確実に渡したい資産がある
  • 相続時の争いを避けたい
  • 不動産の管理負担を早めに移したい

正しい制度を選び、計画的に進めれば、税負担は大きく抑えることができます。

不動産の贈与は専門的な知識が必要なテーマですが、この記事を参考にしながら、親子で話し合い、税理士や司法書士と相談しつつ進めることで、最適な形で資産を引き継ぐことができます。

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