古い物件は投資に向かないのか?
不動産投資と聞くと「新築」「築浅」のイメージが強い方も多いでしょう。しかし実際には、築年数が古い「築古物件」を上手に活用して収益を上げている投資家も少なくありません。
築古物件は価格が安く利回りが高く見える一方で、空室リスクや修繕費用の増加などの不安要素も多くあります。そのため、「本当に儲かるのか?」という疑問を持つのは当然です。
築古投資が抱える典型的なリスク
古い物件を購入したものの、期待した収益を得られないケースも少なくありません。よくある失敗パターンは次のとおりです。
- 修繕費が想定以上にかかり、キャッシュフローが悪化する
- 入居者が集まらず、空室が長期化する
- 金融機関からの融資条件が厳しく、自己資金負担が重い
- 将来的に売却しづらく、出口戦略を描けない
こうしたリスクを踏まえると、築古物件は「初心者には危険」と思われがちです。
築古物件が投資対象になる理由
それでも多くの投資家が築古物件を狙うのには理由があります。結論から言えば、正しく再生し、戦略的に運営すれば築古物件でも十分に儲かるからです。
- 取得価格が安いため、初期投資を抑えやすい
- リフォームやリノベーションで付加価値をつけられる
- 築年数が古くても需要のあるエリアなら安定した入居が見込める
- 減価償却を活用して税務上のメリットを得られる
つまり築古物件は、リスクを把握したうえで再生戦略を立てられる投資家にとっては有力な選択肢なのです。
築古再生投資が成り立つ理由
価格の安さと利回りの高さ
築古物件は新築に比べて価格が大幅に安いため、同じ家賃収入を得ても利回りが高くなりやすい特徴があります。
リノベーションによる付加価値
古い間取りや設備を刷新すれば、新築同様の住み心地を提供できます。特に水回りや内装を現代的に変えることで、入居希望者の数を増やせます。
減価償却を活用した節税
中古物件は耐用年数が短く設定できるため、減価償却による節税効果が大きくなります。個人事業主や中小企業経営者にとって、所得税・法人税の圧縮に有効な手段となるのです。
築古物件の再生投資は誰に向いているか
築古再生投資は、以下のような投資家に向いています。
- 本業で安定した収入があり、不動産投資を副業的に進めたい人
- リフォームや修繕に関する知識を学ぶ意欲がある人
- 税金対策を兼ねて資産運用をしたい事業主
- 新築物件では利回りが低く感じている投資家
反対に「不労所得を完全に求める人」「短期的に現金化したい人」にはやや不向きです。
築古物件が敬遠されがちな理由
修繕費用の増加
築年数が古い物件では、次のような修繕が必要になる可能性が高まります。
- 屋上防水や外壁塗装など大規模修繕
- 給排水管の劣化による漏水工事
- 設備(給湯器、エアコン、キッチン、浴室など)の入れ替え
これらは数十万円〜数百万円規模で発生し、キャッシュフローを圧迫します。
入居者募集の難しさ
築古物件は「古くて住みにくい」と思われがちです。特に次のような特徴は敬遠されやすい傾向があります。
- 和室主体の間取り
- ユニットバスや3点式の古い水回り
- セキュリティ不足(オートロックなし、モニター付きインターホンなし)
入居者のライフスタイルに合わない場合、空室期間が長引きます。
融資条件の不利さ
金融機関は築古物件に対して、融資期間を短く設定する傾向があります。
- 木造アパート(耐用年数22年)→ 築20年以上だと融資期間が極端に短い
- RC造(耐用年数47年)→ 築30年超でも融資可能だが、条件は厳しくなりやすい
自己資金を厚く求められるため、キャッシュフローの計画が難しくなることがあります。
築古物件でも成功できる理由
取得価格が安く利回りが高い
同じ家賃収入を得ても、購入価格が低ければ利回りは高くなります。例えば、
- 新築アパート:家賃収入400万円/購入価格6,000万円 → 表面利回り6.6%
- 築古アパート:家賃収入400万円/購入価格3,000万円 → 表面利回り13.3%
このように収益性のポテンシャルは築古物件の方が高いのです。
リフォーム・リノベーションで差別化できる
築古物件の弱点は「古さ」ですが、逆に言えば再生によって大きく価値を高められる余地があるともいえます。
- 水回りを交換して現代的な設備にする
- フローリングやクロスを刷新して清潔感を出す
- オートロックや宅配ボックスを導入して付加価値を高める
こうした工夫で、築古でも新築に近い競争力を持たせられます。
減価償却を利用した節税効果
中古物件は「耐用年数の短縮」を活用できるため、建物部分の減価償却を早く進められます。
法人や高所得の個人事業主にとっては、税金対策としても有効な投資手法になります。
築古再生投資の成功条件
条件1:立地の良さ
立地は築年数以上に重要です。多少古くても、駅近や大学・病院などの施設に近いエリアは需要が安定します。
条件2:建物の構造と状態
- RC造:長期保有に向きやすい
- 木造:修繕費がかかるが、初期投資を抑えやすい
購入前にインスペクション(建物診断)を実施して、修繕の必要性を確認しておくと安心です。
条件3:リフォーム戦略
「最低限のリフォーム」で住みやすさを向上させるのか、「フルリノベーション」で付加価値を高めるのかを明確にします。費用対効果を見極めることが大切です。
条件4:出口戦略を描く
売却時の市場価値を事前に見積もり、キャッシュフローと売却益の両方を考えたプランを立てることが必要です。
築古再生投資の具体例
事例1:築30年の木造アパート再生
- 購入価格:2,000万円(8戸一棟)
- 家賃:3万円/戸
- 満室時年間収入:288万円
改修内容
- 外壁塗装・屋根補修:300万円
- 各部屋の内装リフォーム(クロス・床・水回り簡易交換):200万円
- 合計:500万円
改修後の結果
- 家賃を3.5万円に引き上げ
- 年間収入:336万円
- 実質利回り:336万円 ÷ (2,000万円+500万円)= 約13.4%
➡ 改修費用を投じても、築古なら利回りを確保できる好例です。
事例2:築40年の区分マンションリノベーション
- 購入価格:800万円(ワンルーム)
- 改修費用:200万円(水回り交換、床・クロス全面、照明設備)
- 合計投資額:1,000万円
改修前
- 家賃:月5万円
- 年間収入:60万円
- 表面利回り:7.5%
改修後
- 家賃:月7万円
- 年間収入:84万円
- 実質利回り:84万円 ÷ 1,000万円 = 8.4%
➡ 単身者需要の高いエリアでは、内装を刷新するだけで入居付けが改善し、利回りも上昇します。
事例3:築35年RCマンションの大規模修繕
- 購入価格:5,000万円(10戸)
- 改修費用:1,000万円(外壁、防水、エントランスリニューアル)
- 合計投資額:6,000万円
改修前
- 家賃:月6万円 × 10戸 = 720万円/年
- 実質利回り:720 ÷ 6,000 = 12%(ただし入居率が低い)
改修後
- エントランスをホテルライクに改修
- セキュリティを強化(オートロック・モニター付インターホン導入)
- 家賃を6.5万円に引き上げ、入居率向上
- 年間収入:780万円
- 実質利回り:780 ÷ 6,000 = 13%
➡ 大規模修繕で資産価値が向上し、安定経営につながった例です。
築古投資で重要な収支シミュレーション
シミュレーションの要素
- 購入費用:物件価格+仲介手数料+登記費用+不動産取得税
- 改修費用:リフォーム・リノベーション・大規模修繕
- ランニングコスト:管理費、修繕積立金、保険料、固定資産税
- 収入予測:家賃、共益費、駐車場収入
- 空室リスク:空室率を複数パターンで想定(例:5%、10%、15%)
- 融資条件:金利・返済期間・自己資金割合
サンプル収支表(簡略版)
項目 | 金額 |
---|---|
年間賃料収入 | 480万円 |
空室損失(10%想定) | ▲48万円 |
実効収入 | 432万円 |
ランニングコスト | ▲120万円 |
NOI | 312万円 |
年間返済額 | ▲250万円 |
税引前キャッシュフロー | 62万円 |
➡ 空室率や修繕費を織り込んでもプラス収支であれば、投資として成立します。
築古投資の成功パターンと失敗パターン
成功パターン
- 需要のある立地でリフォーム後に賃料アップ
- 修繕計画を立てて費用をコントロール
- 減価償却を活用して税負担を軽減
失敗パターン
- 修繕費を甘く見積もり、赤字化
- 家賃相場を無視して賃料設定を誤る
- 出口戦略を考えず、売却に困る
築古物件に投資するための行動ステップ
ステップ1:目的を明確にする
- 長期保有で安定収益を得たいのか
- 築古を安く仕入れて短中期で売却益を狙うのか
- 節税・相続対策として活用するのか
目的によって、選ぶべき物件や改修のレベルが変わります。
ステップ2:情報収集と相場把握
- 不動産ポータルサイトで築古物件の賃料相場を確認
- 地元の不動産会社にヒアリングし、需要動向を把握
- 金融機関に融資条件を相談して資金計画を固める
➡ 相場を知ることは、価格交渉や出口戦略の成功につながります。
ステップ3:現地調査と建物診断
築古物件では、現地調査が特に重要です。
- 周辺環境や治安、生活利便性を自分の目で確認
- 建物インスペクションを実施し、劣化箇所を特定
- 修繕が必要な項目と概算費用を事前に把握
ステップ4:リフォーム計画の立案
- 最低限の改修でコストを抑えるのか
- フルリノベーションで賃料アップを狙うのか
- 入居ターゲット層(単身者・ファミリー・学生)に合わせた改修を選択
➡ 「改修費用 ÷ 家賃アップ効果」で投資回収期間を試算し、費用対効果をチェックします。
ステップ5:収支シミュレーションとリスク管理
- 空室率を複数シナリオで想定(5%、10%、15%)
- 金利上昇リスクを織り込む
- 将来の修繕費を年割りで計上する
➡ **「最悪のシナリオでも赤字にならないか」**を基準に判断することが重要です。
投資判断のチェックリスト
- 立地は需要のあるエリアか
- 物件価格は相場と比べて割安か
- 修繕履歴や建物状態を確認したか
- 改修後の家賃設定が現実的か
- 融資条件(金利・期間・自己資金)を確認したか
- 実質利回りを試算したか
- 税金・減価償却の効果を計算したか
- 管理会社の運営体制を確認したか
- 出口戦略(売却・保有継続)を描けるか
まとめ:築古物件は戦略次第で「掘り出し物」になる
築古物件は「古くてリスクが高い」と思われがちですが、
- 価格の安さによる高利回り
- リフォームでの付加価値向上
- 減価償却を活用した節税効果
これらを組み合わせれば、十分に収益性を発揮できます。
一方で、修繕費や空室リスクを見誤ると赤字化する可能性もあるため、事前の調査と収支シミュレーションが何より重要です。
結論として、築古投資は「リスクを理解し、再生戦略を立てられる投資家」にとっては非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。