海外不動産投資で見落とされがちな税金のポイント
海外不動産は、日本の物件と比べて利回りが高く見えるケースも多く、投資先として注目されています。しかし、海外で得た収入であっても、日本に住む人は「日本国内の税制」に沿って申告をする必要があります。
さらに、海外不動産は税務ルールが複雑で、
- 申告漏れ
- 経費の扱いミス
- 外国税額控除の記載漏れ
など、多くの投資家が思わぬトラブルに陥る領域です。
この記事では、海外不動産投資に関する税金の全体像を、初心者でも理解できるようにわかりやすく解説します。
海外不動産に関する税金は日本でも申告が必要な理由
海外不動産投資を行う際、多くの初心者が次の疑問を持ちます。
「海外で得た家賃収入は、日本で申告する必要があるの?」
結論は YES(必ず申告が必要) です。
日本には「居住者は世界中の所得に対して課税される」というルールがあります。
つまり、日本に住んでいる限り、
- アメリカの家賃収入
- フィリピンのコンドミニアム売却益
- タイの不動産の短期賃貸収入
…など、 すべて日本の所得税の対象 となります。
このルールを知らずに申告しないと、のちに税務署から指摘され、多額の追徴課税が発生するケースも少なくありません。
海外不動産投資の税金で重要な5つのポイント
海外不動産投資で押さえるべき税金のポイントは、次の5つです。
● 海外で得た所得は日本でも「不動産所得」として申告する
国内不動産と同じ扱い。
● 海外で支払った税金は「外国税額控除」で調整できる
二重課税を防ぐための制度。
● 減価償却費の計算ルールが日本と異なることがある
建物・土地の割合が明確でない国も多い。
● 売却時の税金(譲渡所得)は、日本でも必ず申告
海外だけで申告して終わり、はNG。
● 海外銀行口座や海外資産は「国外財産調書」が必要な場合あり
5000万円超の資産を持つと提出義務が発生。
日本で必要となる税金の種類と申告の流れ
海外不動産から得られる所得に対して、日本で必要な税金は次の通りです。
| 税金の種類 | 内容 |
|---|---|
| 所得税 | 海外の家賃収入や売却益に課税 |
| 住民税 | 所得税の計算結果に応じて課税 |
| 消費税 | 原則、海外不動産には非課税 |
| 固定資産税 | 日本の不動産のみ対象(海外にはかからない) |
| 相続税・贈与税 | 海外不動産も対象(国際相続の注意が必要) |
● 所得税の申告が一番重要
不動産所得がある場合、
→ 確定申告(2月16日~3月15日)
で報告します。
賃貸収入が少額でも、海外物件は原則、申告が必要です。
日本の税務署が特に注目する海外不動産のポイント
税務調査や書面確認で注目されるのは、次の3つのポイントです。
① 海外での経費計上の妥当性
日本の不動産と違い、海外では
- 修繕費
- HOA費用
- 管理費
- 保険料
などの項目が国ごとに異なります。
これらを何でも経費にすると、税務署から「それは経費に該当しない」と指摘されるリスクがあります。
② 減価償却費の計算ルール
海外物件の場合、建物と土地の割合が明確でないことが多く、「建物割合を高く見積もりすぎる」ケースがよくあります。
税務署はこの点を特に重視してチェックします。
③ 外国税額控除の適用漏れ・計算ミス
海外不動産は、
- 現地での税金
- 日本での税金
の「二重課税」になりやすいですが、本来は税額控除で調整できます。
控除を使わないと
→ 本来よりも税金を多く支払ってしまう
という大きな損につながります。
海外不動産投資で税務リスクを防ぐための原則
申告トラブルを避けるために、初心者でも必ず押さえておきたい原則があります。
● 原則①:海外での書類はすべて保存する
領収書はもちろん、
- 賃貸契約書
- 管理会社の請求書
- 固定資産税の明細(海外版)
- 銀行口座の取引明細
- 物件購入契約書
すべてが必要です。
● 原則②:日本の税制に合わせて数字を再計算する
海外の経理ルールをそのまま使うとNG。
特に減価償却費は要注意。
● 原則③:専門家のサポート必須
海外不動産は税務も複雑で、初心者が独学で正確に申告するのは困難です。
専門の税理士に相談することで、
- 税務調査リスクの回避
- 税金の最適化
が可能になります。
国別で異なる海外不動産の税務パターン
海外不動産は国ごとにルールが大きく異なります。日本の税務署も「国による違い」を正確に理解しているため、投資家側も最低限の特徴を押さえておくことが大切です。
アメリカ(USA)の特徴
- 建物比率が高く、減価償却が速い
- HOA費用(管理組合費)が別途必要
- 固定資産税が高め
- 現地の税額証明書が必要
ポイント
アメリカは建物割合が高い傾向があり、日本の減価償却費に有利なケースが多い。ただし、書類不足だと税務署に疑われやすい。
フィリピンの特徴
- コンドミニアムが中心
- 管理費・修繕費が高め
- 建物割合が不明確で記録が曖昧な場合がある
ポイント
建物割合を自分で推測して計上すると調査リスクが高い。必ず現地業者から公的資料を取り寄せる。
タイの特徴
- 保有期間により税率が変動
- 管理費が細かく分かれている
- 会計書類が英語以外の場合も多い
ポイント
領収書の翻訳・科目ごとの整理が必須。日本語訳がない書類は税務署が確認できず、経費否認のリスクがある。
ベトナム・マレーシアなど新興国
- 会計書類が整備されていないケースが多い
- 税務ルールの解釈が時期により変わりやすい
ポイント
個人での投資は慎重に。書類の整備が不十分だと日本での申告に使えない場合がある。
海外不動産の申告を具体例で理解する
ここでは、初心者が理解しやすいように 賃貸収入の申告例 と 売却益の申告例 を紹介します。
【具体例①】海外の賃貸収入の申告方法
■ 前提条件
- アメリカの不動産から年間家賃収入 200万円
- 管理費・修繕費など経費:60万円
- 現地で所得税 10万円支払済み
■ 日本での計算
家賃収入 200万円
− 経費 60万円
= 不動産所得 140万円
この140万円が日本の所得税の対象となる。
■ 外国税額控除
現地で払った税金 10万円は、日本の税額から控除可能。
■ 結果
日本で支払う所得税は控除により軽減され、二重課税が避けられる。
【具体例②】海外の物件売却時の税務(譲渡所得)
■ 前提条件
- タイの物件を購入:2000万円(うち建物割合900万円)
- 売却価格:2600万円
- 売却関連の経費:50万円
■ 日本での計算
譲渡益=売却価格2600万円 −(購入費 + 経費)=550万円
(減価償却の累計費用による調整が必要)
この550万円が日本の譲渡所得として課税される。
■ 注意点
海外で課税された譲渡税があれば、こちらも外国税額控除の対象。
海外不動産投資でよくある申告ミス
税務署が特に注目する項目を、具体的に整理します。
ミス①:建物割合を推測で決めてしまう
→ 書類裏付けがないと否認される可能性大。
ミス②:外国税額控除を使わず余分な税金を支払う
→ 控除をしないと、日本で税金を払いすぎる。
ミス③:通帳・領収書の翻訳を用意していない
→ 税務署が読めず、経費として認められない。
ミス④:現地税制を日本のルールで計算してしまう
→ 不正確な数字となり、申告内容が誤りになる。
ミス⑤:国外財産調書の提出忘れ
海外資産が5000万円を超える場合は提出義務あり。
未提出の場合、ペナルティが発生する可能性。
今日からできる海外不動産の税務管理ステップ
初心者でも迷わず進められるように、実践ステップをまとめました。
ステップ①:書類の整理
- 領収書
- 明細書
- 賃貸契約書
- 銀行明細
- 税金のレシート
すべて原本保管&スキャン保存。
ステップ②:建物割合データを現地から入手
- 売買契約書
- 評価証明書
- 不動産会社の説明資料
できるだけ「数字の根拠」を確保する。
ステップ③:経費区分を日本のルールに沿って仕訳
海外のルールをそのまま日本に持ち込まないこと。
ステップ④:税額控除の対象か確認
現地で課税された税金の種類が控除対象かをチェック。
ステップ⑤:海外不動産に強い税理士と連携
海外不動産の税務は独学は危険。
経験豊富な税理士のサポートを受けることで、
申告ミス・税務調査のリスクを大幅に削減できる。
海外不動産投資のまとめ:正しい申告が最大のリスク管理
海外不動産は魅力的な投資手段ですが、税務のハードルが高いのも事実です。
しかし、
- 正確な書類管理
- 日本の税制との整合性
- 外国税額控除
- 専門家のサポート
これらを正しく行えば、大きなリスクを避けられます。
「海外だからバレない」という時代ではありません。
税務署は国際情報交換制度を通じて海外の課税データを把握しています。
適切な申告を行うことが、投資を長く続けるための最善策です。

