不動産収入と副業収入を一体で考えるべき理由
不動産投資を始めると、多くのオーナーは「不動産の節税」ばかりに意識が向きがちです。しかし、実際の税金計算では、不動産所得・事業所得・給与所得・雑所得など、すべての収入が合算されて税額が決まるという仕組みが採用されています。
つまり、副業や別事業を行っている場合は、それらを【別々の世界の収入】として扱うのではなく、1つの家計・1つの事業体として総合的に最適化すべきなのです。
とくに近年は、副業が当たり前になり、
・不動産+コンサル
・不動産+Web制作
・不動産+せどり
・不動産+オンライン講座運営
など、複数の収入源を持つ人が増えています。
それぞれの収入には個別のルールがあるものの、税金は「合計課税」で決まるため、全体で節税できる形に組み立てることが最も重要になります。
複数の収入を持つと税金が増えやすい落とし穴
複数の収入がある場合、最も注意すべきポイントは 累進課税によって税率が跳ね上がることです。
収入が増えると自動的に高い税率のゾーンに入り、税負担が大きくなるため、想定していたよりも手元に残らないケースはよくあります。
さらに、複業スタイルの不動産オーナーは次のような失敗をしがちです。
よくある税金の失敗例(箇条書き)
- 副業が黒字なのに不動産が赤字で、結果として損益通算が十分に使えていない
- 経費をどの収入に紐づければ良いか分からず、税務リスクを抱えてしまう
- 家事按分の計算を誤り、税務署に否認されやすい状態になっている
- 青色申告特別控除65万円を満額取れていない
- 法人成りの判断を「収入が増えてから」と考えすぎて最適タイミングを逃す
- 所得区分の理解不足により、節税できる選択肢を逃している
これらは、複数の収入があるオーナーに共通する落とし穴です。
しかし、裏を返せば、これらを正しく理解すれば税金を大きく抑えられるポテンシャルがあるということでもあります。
収入を合算した上で税金を最適化するための全体戦略
複数の収入を持つ不動産オーナーにとっての結論は明確です。
結論:不動産収入と副業収入は「合算される前提」で最適化し、経費・控除・所得区分をコントロールすることが最大の節税になる。
税金を最も抑えるためには、以下の3つの軸で対策を立てる必要があります。
税金最適化の3つの軸
- 経費の付け方の最適化(付けられるものは確実に入れる)
- 控除(青色申告控除など)の最大化
- 所得区分・事業体(個人・法人)の選択と分散
この3つを総合的にコントロールすることで、納税額は大きく変わり、手元資金の増え方も変わります。
税金が最適化される仕組みを理解すると節税が簡単になる
ここからは「なぜ」上の結論になるのか、その理由を詳しく解説します。
理由を理解することで、複数収入の節税が非常にクリアになります。
合算課税の仕組みを理解することが節税の第一歩
複数の収入がある場合、税金の計算は次のような流れになります。
所得税の基本計算式
総所得金額 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 = 所得税額
ここで最も重要なのは、「総所得金額」は全収入の合計という点です。
つまり、
- 不動産が黒字
- 副業が黒字
- 給与が安定してある
これらがすべて合算され、結果的に高い税率を適用されることもあります。
反対に、不動産が赤字なら、副業の黒字を相殺して税負担を抑えることもできます。
この仕組みを理解すると、
「どの収入を伸ばし、どの収入は控えめにするか」
という戦略を立てやすくなります。
不動産の赤字と副業の黒字を組み合わせた最適化
複数収入を持つオーナーの大きな武器は、損益通算が使える点です。
損益通算ができる所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得(特定条件)
- 雑所得(事業的規模のものを除く一定条件)
不動産投資では、減価償却費が大きくとれるため、利益が出ていても帳簿上は赤字になるケースがあります。
そして、この赤字は副業収入(事業所得・雑所得)にぶつけることで、合計税額を減らす超強力な節税効果を生みます。
例:不動産の赤字が効くケース(簡略)
- せどり副業:+120万円
- 不動産の減価償却で:-80万円
→ 合算:+40万円に圧縮され、税負担が大幅に軽減
このように、不動産をうまく使えば“副業の節税装置”としても機能します。
経費配分を最適化すれば税負担はさらに下げられる
複数の収入源を持つときに最も難しいのが、経費をどの所得に紐づけるかです。
しかし、ここを最適化すると節税効果は一気に高まります。
経費配分で見るべきポイント
- 税率の高い所得に経費を集中させる(効果が大きい)
- 事業的規模になりやすい収入に経費を集める(青色申告65万円が使える)
- 家事按分は「根拠」の文章化が重要(税務署対策)
- 一つの支出は複数所得に分けて按分してもOK
たとえば、インターネット代は、
- 不動産管理のメール対応
- 副業の業務
- 自宅利用(私的)
これらに按分でき、最も税率が高い所得に重くつければ節税効果は大きくなります。
所得区分の理解が“節税の引き出し”を広げる
複数の収入を持つ場合は、税務上の「所得区分」を理解しているかどうかで取れる節税策が全く変わります。所得区分は大きく以下に分かれます。
所得区分一覧(わかりやすい表形式)
| 所得区分 | 代表的な収入例 | 節税との関係 |
|---|---|---|
| 不動産所得 | 賃貸収入、駐車場収入 | 減価償却が使える。損益通算できる。 |
| 事業所得 | 副業のコンサル、物販、Web制作、店舗運営 | 経費範囲が広く、青色申告65万円控除の対象。 |
| 給与所得 | 会社員の給料 | 経費はほぼ不可。給与所得控除は自動適用。 |
| 雑所得 | フリーランス的収入の一部、少額のネット収入 | 損益通算できない場合が多く節税できないことも。 |
| 譲渡所得 | 不動産売却益、株式売却益 | 不動産は分離課税。株式は申告分離課税。 |
この中でも、不動産所得と事業所得は「損益通算」「青色申告」「経費計上」の自由度が高く、複数収入のオーナーが最も活用すべきカテゴリーです。
特に以下の2つは必須の理解ポイントです。
①副業が雑所得と判断されると節税チャンスが激減する
雑所得は損益通算ができず経費の範囲も狭くなりがちで、税務署は「事業規模ではない」と判断すると雑所得扱いにしたがる傾向があります。
だからこそ、
- 開業届を出す
- 帳簿を付ける
- 継続性・独立性を示す証拠を残す
といった手続きが重要です。
②不動産が「事業的規模」かどうかで青色申告が大きく変わる
Airbnbや戸建て投資など、小規模に始める人が増えていますが、事業的規模(5棟10室基準)があると青色申告特別控除65万円が使えるため、大きな節税につながります。
法人化を活用すれば所得を分散できる
複数の収入を持つ不動産オーナーにとって「法人化」は強力な選択肢です。
法人を使うと次の効果が得られます。
法人化の主なメリット
- 事業所得(副業)を法人に集約して税率を抑えられる
- 個人の不動産所得と法人の所得を分離し、高い所得税率を回避できる
- 役員報酬をコントロールすることで税率を最適化できる
- 経費の範囲が広がり、交際費・交通費・設備投資の自由度が増す
- 家族への給与(役員報酬)を使い“家族全体の節税”ができる
【注意】
法人化は“一発で得になる魔法”ではありません。
「どの所得を法人に移すか」「個人と法人のバランスをどうするか」まで考えた戦略が重要です。
不動産オーナーが複数収入を最適化しやすい典型パターン
ここからは、実際に初心者でもイメージしやすいよう、典型的な収入モデルを例に整理します。
【パターン1】不動産(赤字)+副業(黒字)
一番節税しやすい構造です。
例
- 副業(事業所得):+150万円
- 不動産(減価償却で):−90万円
- 結果:+60万円に圧縮
税率20%の層なら、
90万円 × 20% = 18万円の節税効果。
副業が伸びやすい人ほど効率的に働きます。
【パターン2】不動産(黒字)+副業(黒字)
次のような工夫が必須になります。
- 青色申告65万円控除の取り方
- 経費配分の最適化
- 法人化で所得分散
- 家族を活用した給与所得へのシフト
- 保険・共済の活用で所得圧縮
特に、事業所得の収入が300〜600万円になってくると、所得税率と住民税の負担増が一気に大きくなります。
【パターン3】不動産(黒字)+会社員給与(高め)+副業(黒字)
最も税負担が跳ね上がりやすい構造です。
所得税+住民税+社会保険料がすべて上がり、
手取りの実感が薄くなるパターンの典型例です。
対策は以下が必要になります。
- 法人化して自分への給与を調整
- 家族に給与を出し家族全体の税率最適化
- ふるさと納税の上限管理
- 保険・共済を利用した所得控除の最大化
- 不動産の減価償却(買い過ぎ注意)
【パターン4】法人+個人不動産+副業
資産形成を本気で取り組む人が最終的にたどり着く構造です。
- 法人で事業収入
- 法人から役員報酬
- 個人で不動産所得
- 家族の所得分散
こうした収入コントロールにより、税率を下げながら手元のキャッシュフローを最大化することが可能です。
具体的な節税テクニックを組み合わせると最適化が完成する
以下は複数の収入を持つオーナーが実際に使える節税手段です。
節税方法(箇条書きで網羅)
- 青色申告特別控除(10万円・55万円・65万円)の最大取り
- 不動産と副業の経費を正しく按分して計上
- 減価償却費を使った所得調整
- 自宅兼事務所の家賃按分
- 車の按分(不動産案内・仕入れ・営業活動など)
- インターネット代・スマホ代の按分
- 小規模企業共済
- iDeCo
- セルフメディケーション税制
- 医療費控除
- ふるさと納税
- 法人化による役員報酬と所得の分散
- 家族への給与・役員報酬
- 法人保険によるキャッシュ形成(用途に注意)
これらを収入全体で組み合わせることで、“税率”と“所得の出し先”をコントロールでき、税負担を最小限にできます。
今すぐできる行動ステップ
初心者でもすぐにできる実行ステップをまとめました。
【ステップ1】まず収入全体を一覧化する
- 不動産の収支
- 副業の収支
- 給与の金額
- 家族の収入とのつながり
ExcelやスプレッドシートでOK。
【ステップ2】経費・控除を最大化できるポイントを洗い出す
- どの費用をどの収入に紐づけるか
- 按分の根拠をメモに残す
- 年間の経費スケジュールを作っておく
【ステップ3】青色申告65万円を取れる形に帳簿を整える
- 開業届
- 青色申告承認申請書
- 会計ソフト(freee・MFなど)の導入
【ステップ4】法人化のシミュレーションをする
- 副業の利益が300万円を超えたら必ず検討
- 不動産の所得とのバランスを見る
【ステップ5】税理士・専門家に“複数収入前提”で相談する
一般的な相談ではなく、必ず「副業+不動産+給与の3本セット」で最適化の相談をすることが重要です。

