将来の資産をどう引き継ぐかを考えることが、不動産オーナーにとって重要な理由
不動産投資は「長期的な収益」を得られる魅力的な事業です。
しかし、物件を複数所有するようになると、次に考えるべき課題として浮かび上がるのが 事業承継 です。
多くの不動産オーナーが次のような悩みを抱えています。
- 不動産と法人(不動産管理会社)をどのように引き継ぐべきか?
- 子どもや家族へ渡すとき、税金を最小限に抑えるには?
- 株式と不動産を別々に所有していて複雑になっている
- 将来的に相続トラブルを防ぐにはどうすればいいのか?
これらの問題は、早い段階で準備をしておけばスムーズに解決できます。しかし、対策を後回しにしてしまうと、
相続税が高額になる、家族間でもめる、経営が継続できない
といった深刻な事態に発展することもあります。
特に不動産オーナーの場合、
- 法人の株式
- 個人所有の不動産
- 現金・借入金
- 不動産管理会社の収益
など、承継すべき資産が多岐にわたるため、「まとめて承継する仕組みづくり」が重要になります。
この記事では、不動産オーナーが知っておくべき 株式と不動産をまとめて引き継ぐ実践的な方法 をわかりやすく解説します。
不動産オーナーの事業承継でよくある3つの課題
不動産オーナーの承継対策で特に問題となりやすいのは次の3つです。
課題①:不動産と法人株式がバラバラで複雑な状態になる
不動産の一部は個人名義、他は法人名義、さらに法人株式が各家族に少しずつ分散している…
こうした状況は、承継時に最もトラブルのもとになります。
課題②:相続税が高額になりやすい
不動産は評価額が大きくなりがちで、相続税の対象となる資産としては非常に重たい存在です。
さらに、法人の株式も相続財産になるため、二重に負担が発生することもあります。
課題③:後継者が決まっていない、または複数いる
不動産オーナーの家庭では、
- 長男に不動産
- 次男に株式
というように資産を分けてしまい、のちに公平性に関する争いが起きることも。
こういった課題を解決するためには、
不動産も株式も「ひとつの流れで承継できる仕組み」を作ること が重要になります。
不動産と株式をまとめて引き継ぐための最適な方向性
ここで結論を先に整理します。
不動産オーナーの事業承継は
「法人化 → 不動産の法人集約 → 株式に価値をまとめる → 株式承継」
が最もスムーズで、税負担も最小化できる。
つまり、
不動産そのものを相続させるのではなく、会社という「器」にまとめ、その株式を承継する方式がベスト
ということです。
これにより、
- 不動産評価の圧縮
- 株式の評価引き下げ
- 事業の一体運営
- 分割しやすい財産形成
が可能になります。
では、この結論にどのような理由があるのかを次に解説していきます。
不動産と株式の承継を法人で一本化するべき理由
不動産をそのまま相続する場合と、法人に集約して株式で承継する場合では、税金・組織運営・トラブル回避の面で大きな差があります。
理由①:不動産を法人に集約すると相続税評価額を抑えられる
不動産の相続税評価は、
- 路線価
- 固定資産税評価
- 借家権割合
などで計算されます。
一方、法人株式の評価は、
- 会社の収益力
- 純資産額
- 類似業種比準価額
などで決まります。
不動産を法人に集めておくことで、
株式評価が相対的に低く抑えられるケースが非常に多い のです。
理由②:不動産そのものを分割する必要がなくなる
不動産を複数人で相続すると、
- 共有持分
- 利益分配の調整
- 売却時の合意
など、管理が非常に複雑になります。
法人に入れて株式で承継すれば、
株式の割合で簡単に分けられる ため、争いごとが圧倒的に少なくなります。
理由③:借入金も含めて一体で承継しやすい
不動産オーナーの資産には、金融機関からの借入金がセットになっていることが多いです。
法人化し株式承継すれば、
- 借入金
- 家賃収入
- 経費
- 修繕積立
なども一体で引き継げるため、後継者が引き継ぎやすくなります。
理由④:節税対策を計画的に進められる
承継対策は、
- 小規模宅地の特例が使えない不動産
- 遺留分対策
- 資産の分散
など、考えることが多岐にわたります。
法人化しておけば、
株式の評価調整や贈与計画、持株会社スキームなど、
選べる節税策が圧倒的に増える のが最大のメリットです。
不動産を法人に集めるための実務スキーム
不動産オーナーが事業承継対策を行う際は、
法人化 → 不動産の法人集約 → 株式承継
という流れが基本になります。
ここでは代表的な2つのスキームを紹介します。
● スキーム①:管理会社方式(一般的な法人化)
最も使われている方法です。
■ 流れ
- 管理会社(不動産管理法人)を設立
- 個人所有不動産はそのまま
- 家賃の一部(管理料)を法人に移転
- 法人の株式を後継者に承継する
■ メリット
- 手続きが簡単
- 売買契約を伴わないため移転税コストが少ない
- 家族への所得移転がしやすい
■ デメリット
- 不動産自体が個人に残り、相続財産が二重構造になる
- 不動産そのものの分割問題は残る
- 相続税の評価は下がりにくい
● スキーム②:持株会社(ホールディングス)方式(承継最強)
不動産と株式を完全に一体化できる高度な方式です。
■ 流れ
- 親会社(持株会社)を設立
- その子会社に不動産を集約
- 親会社が子会社の株式を100%保有
- 親会社の株式を承継させる
■ メリット
- 不動産と株式を一体の資産として引き継げる
- 株式評価を下げやすく節税効果が大きい
- 法人のグループ経営ができ、相続トラブルが少ない
- 数十年先を見据えた承継計画が可能
■ デメリット
- 設計と税務が複雑
- 不動産を法人へ移転する場合、登録免許税・不動産取得税がかかる
- 専門家による設計が必須
株式承継による節税を最大化するポイント
法人化して株式で承継する場合、重要なのは 株式の評価額を正しくコントロールすること です。
株式の相続評価は主に次で決まります。
- 純資産価額方式(不動産などの資産が多い場合)
- 類似業種比準価額方式(収益力がある会社)
不動産オーナーの法人は、
「資産>収益」になりがちなので、多くの場合 純資産価額方式 で評価されます。
しかし、法人化の仕組みを上手く作ることで株式評価を下げることができます。
■ 株式評価を下げる代表的な方法
✔ 不動産の法人移転時に借入金をセットで移す
→ 純資産を圧縮できる
→ 株式評価が下がる
✔ 使わない土地を売却・等価交換する
→ 資産構成を整理し、評価額を安定させる
✔ 配当を抑え、役員報酬で利益調整
→ 利益が出すぎると類似業種比準価額が高くなるため注意
✔ 事前贈与で株式を段階的に承継
→ 毎年少額ずつ贈与し、累計の評価を抑える
■ 親から子へ株式を渡すベストタイミング
・親が働いているうち
・会社が赤字または利益が少ない時
・借入金が残っている時
・不動産取得直後
・不況期・金利上昇期
株式評価が下がるタイミングで承継すると、節税メリットが大きくなります。
ケース別でわかる不動産オーナーの承継パターン
イメージしやすいように、代表的な承継シナリオを紹介します。
ケース①:個人不動産を多数持つオーナー
● 現状
- 不動産10件を個人所有
- 法人はなし
- 子ども2人
● 問題
- 不動産を共有相続すると揉める可能性が高い
● 解決方法
- 法人を設立し、利用頻度の高い物件から徐々に法人化
- 最終的に法人管理へ一体化
- 株式を子どもに1:1で承継し、会社として管理
● メリット
- 分割しやすい
- 管理が簡素化
- 評価の調整が効く
ケース②:家族経営の不動産管理会社を持つオーナー
● 現状
- 法人化済み
- 不動産は個人&法人に混在
- 後継者は長男
● 解決方法
- 不動産をすべて法人へ集約(タイミングは慎重に)
- 法人株式を長男に承継
- 次男には現金や保険で調整
● メリット
- 事業承継がスムーズ
- 遺留分対策もしやすい
ケース③:将来、資産管理を家族全員で担いたいケース
● 解決方法
- 持株会社(ホールディングス)を設立
- 子どもに段階的に株式を贈与
- 各子どもに役割を持たせる(財務・管理業務など)
● メリット
- 事業承継だけでなく「教育の場」としても活用可
- 家族全員が「資産を守る仕組み」に参加できる
今日からできる事業承継の準備チェックリスト
初心者オーナーでもすぐに取り組めるよう、行動ステップに落とし込みました。
ステップ①:資産一覧を作成する
- 不動産
- 借入金
- 現金・預金
- 法人株式
- 契約書類
まずは「現状の棚卸し」。
ステップ②:法人の設立状況と資産配置を確認する
- 個人資産と法人資産の整理
- どの不動産を法人に入れるか決める
ステップ③:株式承継の方向性を決める
- 後継者は誰か
- 株式をどう分配するか
- 遺留分の影響はどうか
ステップ④:事前贈与・相続税対策を計画する
- 年間110万円の暦年贈与
- 事業承継税制の活用
- 保険を活用した納税資金準備
ステップ⑤:専門家と承継プランを設計する
不動産承継は税務・法務・金融の知識が必要なため、
税理士・司法書士・弁護士とチームを組んで進めることが重要。
【まとめ】不動産と株式を「まとめて承継」する仕組みが未来を守る
不動産オーナーの事業承継は、単なる相続ではありません。
- 不動産
- 法人
- 株式
- 借入金
- 収益構造
これらを「ひとつの資産モデル」としてつくり、それを次世代に引き継ぐプロジェクトです。
その最も効率的な方法が、
法人に不動産を集約し、株式を承継する方式。
これにより、節税・分割・運営のすべてでメリットを最大化できます。
早いほど効果が大きくなるため、今日から少しずつ準備していきましょう。

