不動産オーナーが押さえておきたい節税の全体像
不動産投資は家賃収入によるキャッシュフローだけでなく、税金コントロールによって手取りを最大化できる投資です。しかし、多くの不動産オーナーは「自分がどれくらい節税できるのか」を具体的にイメージできていません。
節税の効果は、
- 年収(給与所得)
- 物件の規模・保有戸数
- 融資残高・減価償却の額
- 経費の使い方
によって大きく変わります。
つまり「あなたの属性に合った節税方法」が存在します。
本記事では、代表的なケースをもとに、年収別・保有戸数別の節税シミュレーションを提示し、不動産オーナーが最適な税金戦略を立てられるように体系的に解説します。
自分に合った節税方法を理解せずに投資を続けるリスク
不動産投資の初心者ほど、節税について次のような誤解を抱きがちです。
- 経費を増やすこと=節税だと思っている
- 減価償却は適当に計算すればいいと思っている
- 物件数を増やすほど税金が得だと思い込んでいる
- 年収によって節税効果が大きく違うことを知らない
- 法人化の判断基準が曖昧なまま判断してしまう
こうした誤解を放置すると、次のような問題が発生します。
- 本来払わなくてよい税金を払い続ける
- 節税のつもりでキャッシュフローが悪化する
- 減価償却を使い切れず、節税チャンスを逃す
- 法人化の判断を誤り、税負担が逆に増える
- 融資戦略と税金戦略が噛み合わなくなる
不動産投資は「税務を知らない=利益を減らす」ことに直結します。
だからこそ、年収と保有物件に応じたシミュレーションが必要になります。
節税シミュレーションから導かれる最適戦略
この記事で紹介するケーススタディを踏まえると、不動産オーナーが導き出すべき結論は次の通りです。
結論:節税効果は“年収×保有戸数×減価償却のバランス”で大きく変わるため、属性別の節税設計が不可欠である。
同じ物件を持っていても、
- 年収500万円の会社員
- 年収1200万円の医師・経営者
- 物件1戸のみの投資家
- 物件5戸以上のベテラン投資家
では、最適な節税方法が全く異なります。
これを理解すると、節税の判断が明確になり、無駄な支出や誤った投資判断を避けることができます。
節税効果が変わる理由
不動産オーナーの節税効果が大きく変わるのは、税金計算の構造が「個人の総所得」に強く影響されるためです。
ここでは、節税結果を左右する重要な要因を整理します。
所得税・住民税は累進課税である
所得税は以下のように所得に応じて税率が変動します。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
| 695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
| 900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
| 1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
| 4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
| 4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
※住民税は一律10%
例えば、年収1200万円の人が経費や減価償却で100万円の赤字を作ると、
約43%=43万円の節税になります。
一方、年収500万円の人は、
約20%=20万円の節税に留まります。
同じ100万円の経費でも節税効果は倍以上違うのです。
減価償却の活用度で節税効果が大きく変わる
築古物件や木造アパートは減価償却費が大きく、節税効果が高くなります。
例:築20年木造アパート
1,500万円の建物価格 → 償却期間22年 → 年間減価償却68万円
これだけで所得が68万円圧縮されるため、
年収1000万円の投資家だと 年間約29万円 の節税。
物件数が増えるほど経費が増える
物件が増えると、次の経費が積み上がります。
- 管理費
- 修繕費
- 火災保険・地震保険
- 減価償却の増加
- 旅費交通費(現地確認)
その結果、
物件が3戸 → 5戸 → 7戸 と増えるごとに節税額は飛躍的に増加します。
法人化が有利になるラインが存在する
個人の税率が高い場合、次のようなタイミングで法人化が有利になります。
- 給与所得+不動産所得が高い
- 減価償却が大きいRC物件を保有している
- 物件数が増えて経費構造が複雑化している
法人税率は約23%前後で頭打ちになるため、
年収+不動産所得が高い人は節税メリットが大きいといえます。
年収500万円 × 物件1戸(区分マンション)の場合
まずは、初心者に最も多いケースです。
■ モデルケース
- 年収:500万円
- 保有物件:区分マンション1戸
- 年間家賃収入:120万円
- 経費:管理費・修繕費など 55万円
- 減価償却:35万円(RC/残耐用年数20年)
■ 不動産所得
家賃収入120万円 − 経費55万円 − 償却35万円 = 30万円の利益
■ 税金への影響
所得税率は約10%、住民税10% → 合計約20%
30万円 × 20% = 6万円の節税効果
■ ポイント
- 年収が低い層は節税効果は抑えめ
- 築浅区分マンションでは経費と償却が少なく、節税効果は小さい
- 「キャッシュフロー目的」には向くが「節税目的」には不向き
年収800万円 × 物件3戸(木造アパート1棟+区分1戸)
中堅層で節税効果が大きく変わるライン。
■ モデルケース
- 年収:800万円
- 保有物件:木造アパート1棟+区分
- 年間家賃収入:420万円
- 経費:160万円
- 償却:110万円
■ 不動産所得
420万円 − 160万円 − 110万円= 150万円の利益
→ 償却と経費で実質の所得を圧縮できる。
■ 節税効果
税率約30%
150万円 × 30% = 45万円の節税
■ ポイント
- アパート1棟の償却が節税の柱になる
- 修繕が出やすいため経費にも余裕
- 年収800万円層は「不動産所得で税圧縮」が最も効果的
年収1200万円 × 物件5戸(アパート2棟+区分3戸)
医師・経営者・高年収会社員の典型的な強い節税モデル。
■ モデルケース
- 年収:1200万円
- 保有物件:アパート2棟+区分3戸
- 家賃収入:800万円
- 経費:300万円
- 償却:250万円
■ 不動産所得
800万 − 300万 − 250万= 250万円の利益
■ 節税効果
税率約43%
250万円 × 43% = 107万5000円の節税
■ ポイント
- 税率が高いので償却の効果が非常に大きい
- 年200万円以上の節税も珍しくない
- 法人化を考えるラインに到達し始める
年収1800万円 × 物件5戸+築古アパートフル活用
高所得者特有の“減価償却節税”のメリット最大化。
■ モデルケース
- 年収:1800万円
- 保有物件:アパート3棟+区分3戸
- 家賃収入:1100万円
- 経費:400万円
- 償却:420万円(築古RC1棟を追加)
■ 不動産所得
1100万 − 400万 − 420万= 280万円の利益
■ 節税効果
税率約48%
420万円の償却 × 48%= 約201万円の節税
■ ポイント
- 高税率層 × 償却の組み合わせは最強
- 限界税率48%なので“半分が節税効果”
- 法人化すると逆に効果が薄くなる場合もあり、個人運用のままでもよいケースが多い
保有戸数別の節税シミュレーション比較
所得別に続いて、物件数でどれほど変わるかを比較します。
■ 戸数別の節税効果の推移
| 保有戸数 | 年間償却額 | 経費合計 | 節税額(年収800万円想定) |
|---|---|---|---|
| 1戸 | 35万円 | 45万円 | 約15万円 |
| 3戸 | 110万円 | 160万円 | 約45万円 |
| 5戸 | 250万円 | 300万円 | 約90万円 |
| 7戸 | 380万円 | 420万円 | 約135万円 |
ポイント
- 3戸増えるごとに節税額が倍増する傾向
- 物件数が増えるほど修繕費や保険料が積み上がる
- 償却費が自然と増えるため“節税体質”が強化される
実践的な節税テクニック(初心者が使いやすい順)
経費の正しい計上(無駄なく、漏れなく)
初心者が効果を実感しやすいのはこれ。
経費例
- 管理会社への委託費
- 修繕費
- 旅費交通費(現地確認)
- セミナー費・書籍・専門家相談費
- 火災保険料
- 税理士費用
特に旅費交通費は“適正な記録”が重要です。
減価償却を年単位で最適化する
償却は節税の最大の武器。
戦略の例
- 築古物件 → 短い耐用年数で償却スピードが速い
- 中古RC → 残耐用年数を短く設定できることがある
- 法人化後 → 定率法より定額法のほうが読みやすい
青色申告で最大65万円控除
不動産所得規模が大きいなら必須。
控除の種類
- 65万円控除
- 専従者給与の計上
- 赤字の繰越
特に赤字繰越は「翌年以降の節税効果を倍増させる」キーテク。
法人化による税率最適化
次の条件では法人化の検討余地が大きくなります。
- 不動産所得が年間300万円以上
- 修繕・償却が多い物件を複数保有
- 節税よりも「資産管理」「相続」が目的
法人化は「節税だけが目的」だと失敗しがちなので、慎重に。
不動産オーナーが今日からできる行動ステップ
節税シミュレーションを最大活用するための行動を整理します。
■ 今日やるべきこと
- 自分の年収と所得税率を把握する
- 保有物件の減価償却額を一覧化する
- 経費の棚卸しを行う(漏れ探し)
- 3年分の課税明細書・修繕履歴をまとめる
- 税理士に“属性別の節税シミュレーション”を作ってもらう
■ 1ヶ月以内にやるべきこと
- 修繕費・経費の計上方法を整理する
- 青色申告の開始届を提出(未提出の場合)
- 長期の償却スケジュールを作成
- 個人・法人どちらが有利か簡易比較する
■ 半年以内にやるべきこと
- 法人化の具体検討(必要な場合)
- 物件追加の際に“税金インパクト”を計算する
- 保険・修繕・管理費の見直し

